研究課題/領域番号 |
26730058
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 昌毅 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50530086)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 空間情報 / 公共交通情報 / 屋内位置情報 / 公共交通利用促進 |
研究実績の概要 |
本研究では,空間属性を備えた情報の爆発を背景に,それを誰もが容易に閲覧できる新しい情報ブラウジング手法を開発する.本年度は昨年度から引き続いて,特に公共交通による移動中の空間情報に焦点を当て,基礎となる位置情報システムと,公共交通情報の流通システムについて研究を行った. 位置情報としてGPSの信号が届かず位置情報が取得出来ない地下鉄にを対象とし,走行中の車両の現在位置を認識する技術を開発した.本年度は,近年スマートフォンへの採用が進む気圧計を利用した位置情報システムを研究した.地下鉄トンネル内を走行中,車内のの気圧は様々な要因で大きく上下に変動する.一方駅での停車中は,当日の気象条件と駅の標高を反映した一定の値となる.この特性を利用し,走行と停車状態を判定するとともに,停車中において停車駅を判断した.この手法を東京メトロの車内で実際に取得した気圧データを用いて評価するとともに,開発した位置情報技術を採用したプロトタイプアプリケーションを開発した. 情報流通システムとしては,情報整備が進んでいない小規模なコミュニティバスを対象に昨年度に引き続きOpenTrans.itという情報提供ポータルを開発し,バス停や時刻表データを提供した.ここでは,GTFSという世界標準形式でオープンデータとして提供し,さらにバスに搭載したスマートフォンからロケーション情報とバス停ごとの乗降人数をリアルタイムに配信している.本年度は静岡県島田市のデータを整備するとともに,GTFSによりGoogle Mapsへの配信を実現した. どちらにおいても情報ブラウジングのための基盤的な技術であり,それぞれ実用性の高い技術として実際の運用に至るまで開発を続けている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,空間属性を備えた情報を誰もが容易に閲覧できる新しい情報ブラウジング手法の開発を目指している.そのため,前提として空間属性を備えた様々に情報にアクセス可能な状況を実現する必要がある.本年度は,昨年度に引き続き,空間情報の中でも公共交通に関連した情報に焦点を当て,そのための基礎技術の開発を基礎となる位置情報システムと,情報流通システムという観点から行った. 位置情報システムとしては,本年度開発した技術を発表した"5th International Workshop on Mobile Entity Localization and Tracking in GPS-less Environments"においてBest Paper Awardを受賞し,現在も技術の改良を続けている. 情報流通システムとして開発したOpenTrans.itは,2015年1月よりシステムを稼働させ,データ配信を続けている.現在は静岡県島田市のデータがGTFSフォーマットでGoogle Mapsへ配信されているが,これは,筆者が調査する限り,日本で唯一の交通事業者がオープンデータとして提供する公共交通データの乗り換え案内への活用事例であり,公共交通データの流通促進に向けた先進事例として評価されている.また,こうした情報提供,流通に関する問題を議論するシンポジウムとして2016年2月に開催した「交通ジオメディアサミット ~ IT×公共交通 2020年とその先の未来を考える~」は,200名近い参加者を集め,Impress Internet Watchにおける紹介記事が注目を集めるなど,公共交通データの公開や流通促進の原動力となっている. どちらの技術も基盤技術であり,目標自体を直接成し遂げているわけではないが,それぞれ完成度が高い技術として運用に至っており,本研究の達成度としても概ね順調であると評価出来る.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,空間属性を備えた情報を誰もが容易に閲覧できる新しい情報ブラウジング手法の開発を目指しており,特に公共交通の情報や利用者を想定しながら研究を進めている.現在まで,基盤技術として必要な地下鉄向け位置情報システムと,公共交通の時刻表や路線データの情報流通システムを開発し,実運用を続けるとともに,様々な場で高い評価を受けている.最終年度は,これらの技術を前提に,空間情報の閲覧や空間的行動決定を支援するアプリケーションや視覚化の技術の研究を進めてゆく.主に,都市での移動をシナリオとして想定し,その際に相応しいアプリケーションの形を,スマートフォンやスマートウォッチ,IoTなどの技術基盤上でどのように実現してゆくか研究を続ける.また,街頭サインと手元の情報機器との連携も検討してゆく.これらの観点から,公共交通から徒歩移動などを一貫した,都市での行動決定などを支援する情報提示技術を研究してゆく.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予算通りに利用しているが、一部の旅費の精算額などの関係で多少の残金が生じたため、次年度に使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
総額は大きく変わらないため、当初の仕様計画から変更はしない。
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