研究課題/領域番号 |
26730060
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松原 靖子 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (00721739)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ソーシャルネットワーク / 非線形解析 / 特徴自動抽出 / テンソルデータ |
研究実績の概要 |
昨年度に取り組んだ基盤技術の強化と向上に取り組むとともに,より複雑なデータ構造上での解析手法の提案を行った.具体的には,以下の項目について研究開発を行った. (a) ソーシャルネットワーク上のユーザ活動の非線形解析:Web上のユーザの活動のパターンを高度な非線形モデルで表現し,将来の動向を予測するアルゴリズムを提案した.より具体的には,複数のオンラインアクティビティ間の活動パターンを生態系に基づく非線形モデルとして表現・解析し,隠れた関係性と競合ネットワークを抽出することにより,従来手法と異なるアプローチに基づく将来予測の手法を開発した.大規模なデータセットに対する評価実験を行い,提案手法が既存の最新予測手法と比較し,性能,精度ともに大幅な向上を達成したことを確認した. (b) 大規模時系列データの非線形テンソル解析:多次元時系列データの非線形解析手法を拡張し,より高度なデータ構造であるテンソルデータの解析手法を開発した.具体的には,ソーシャルネットワーク上のユーザ活動を,グローバル,ローカルの両視点から解析する統合的なモデルを提案し,より複雑なユーザの活動パターンを非線形的に解析する手法を提案した.提案手法は,{activity, location, time}の三つ組で構成されるイベントテンソルデータに対し,隠れた競合ネットワークや,ユーザのローカルパターン,季節性など,様々な情報を多角的な視点から抽出する. (c) 大規模時系列グラフデータの特徴自動抽出:大規模センサネットワーク上の特徴自動抽出手法を拡張し,複雑なテンソルデータ上での特徴自動抽出を行う機構を開発した.より具体的には,大規模テンソルデータを非線形モデルとして表現し,情報圧縮を行うことにより,人の手を介することなく重要な情報を自動的に発見することができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に引き続き,大規模時系列データマイニングのための基礎理論の確立,および,国内外における研究議論と発表を活発におこなった.さらに,初年度の技術を発展し,より高度な時系列解析である予測手法に着手した.提案技術は,国内外においてその新規性と有用性が高く評価され,データマイニング,Web分野における最も著名な国際会議であるWWW (International World Wide Web Conference)に論文が採録された.さらに,本研究の一連の技術を発表する目的として,データベースの著名な国際会議である ACM SIGMODにおいて,3-hour tutorialや複数件の招待講演を行った.カーネギーメロン大学(CMU)との国際共同研究を実施し,”Mining and Forecasting of Big Time-series Data”に関する共同論文発表およびチュートリアル講演を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては,特に,より実用面を重視し,大規模時系列グラフデータに基づく将来イベント予測技術の確立に関する研究を行う.具体的には,本年度において確立した(a) ネットワーク上の非線形時系列解析,(b) テンソル解析,(c) 特徴自動抽出の3つの基礎技術に基づく,大規模時系列グラフデータのための高度な解析技術を提案するとともに,既存の線形モデルに基づく解析手法と比較し,精度,性能の大幅な向上を達成する大規模時系列グラフデータのためのイベント予測システムの開発を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
データセット格納用のハードディスクの購入を実験終了後の次年度に変更するため.
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次年度使用額の使用計画 |
データセット格納用のハードディスクを購入する.
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備考 |
Yasushi Sakurai,Yasuko Matsubara, Christos Faloutsos, "Mining and Forecasting of Big Time-series data", ACM SIGMOD Conference, Melbourne, AU, 2015 (3hour-tutorial).
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