研究課題/領域番号 |
26730062
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五十嵐 亮 東京大学, 情報基盤センター, 特任講師 (10548895)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 数値計算手法 / MPS / 対角化 / 特異値分解 |
研究実績の概要 |
格子上のハバード模型やハイゼンベルグ模型などの量子格子模型は、高温超伝導体のメカニズムなどを説明する模型として広く研究されており、このような模型を数値的に正確に解くことへの需要は非常に強い。そのため、今後数万ノードで数十万計算ユニットのようにさらに並列度があがっていくこおが予想される超並列スーパーコンピュータ上で性能を発揮できる、量子格子模型のシミュレーションソフトウェアを開発し、オープンソース・ソフトウェアとして広く一般に公開することが本研究の目的である。平成27年度は、量子格子模型を解くための数値計算手法である、厳密対角化法及びMatrix Product State(MPS)法、およびテンソルネットワーク法の実装に向け、プログラム中の計算の大部分を占める行列の特異値分解や対角化、行列積演算について、演算加速装置(GPU)を利用する実装とその評価を行った。また、乱択アルゴリズムを用いた並列実装およびその評価も、前年度に継続して行った。GPUを使うことで、CPUだけの時よりも2-3倍は高速化できることがわかり、今後、CPUとGPUの双方の活用をめざして実装を改善していきたい。 また、近年のソフトウェア工学分野で頻用されている、継続的インテグレーションの手法は、本研究のように一人でのアルゴリズムの実装・試験などに適用しても、十分な有用性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画では、行列演算には既存のライブラリを利用することにしていたが、新アルゴリズムの導入で、新たに自ら実装する必要ができ、有望な数値計算アルゴリズムの試験およびその実装に時間を取られており、プログラムパッケージ全般の完成まではできなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新アルゴリズムの実装そのもののオープンソースによる公開と普及とともに、プログラムパッケージ全体の公開・普及に取り組んでいきたい。東京大学情報基盤センターのスーパーコンピュータでも性能が出せる実装に改良し、利用者に向けた講習会の開催も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新アルゴリズムの実装が研究のメインとなったことにより、計算資源の利用が東京大学物性研究所の共同利用スーパーコンピュータで十分となったため、計算資源の利用代金が必要なくなった。さらに、当該システムにはGPUも付属しており、試験には十分であった。また、プログラムパッケージ全体の完成が遅れており、そのための論文出版や国際学会での発表がおくれているため、未使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、早急にプログラムパッケージを完成させ、それを利用した論文出版と国際会議での発表をこれまで以上に行う。
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