研究課題/領域番号 |
26730065
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川本 淳平 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (10628473)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | データ管理 / データマイニング / プライバシ保護 / 情報サービス |
研究実績の概要 |
本年度も,プライバシ保護技術に関してデータマイニング技術と暗号技術の二種類のアプローチで研究を進めた.データマイニングに関しては,従来の時系列位置情報に加え,昨今注目を集めている IoT を対象とした.具体的には,複数地点における部屋の照度,温度,湿度及び電気使用量をリアルタイムで収集する環境において,それぞれの部屋から得られる情報のプライバシ保護に取り組んだ.その成果は,国際会議 International Conference on Information Networking (ICOIN 2016) で発表するとともにオープンソースソフトウェアとして公開予定である.さらに,スマートフォンの代表的な OS の一つである Android を対象として,スマートフォンが収集し送信する機微な情報を評価する研究も行った. また,プライバシに関係する機密情報の安全な保存及び利活用基盤のための暗号技術に関する研究の成果は二つある.一つ目は,秘密分散技術を用いた多地点多事業者にまたがる安全な情報管理方式である.東日本大震災以降,複数地点に情報を分けて保存することが進められているが,情報のコピーを増やせばプライバシ情報の漏洩リスクも高まる.また,事業者の不注意による個人情報の漏洩事件も発生している.そこで,多地点多事業者にまたがって情報を分散保存する仕組みを実現した.二つ目は,秘密鍵が盗難や譲渡された場合であっても,プライバシ情報を守る仕組みの実現である.情報リテラシの低いユーザに対するプライバシ保護技術として,秘密鍵の漏洩対策は重要であるといえる.以上の研究も国際会議にて発表を行った. 最後に,提案アルゴリズムのスケーラビリティを評価するため,今年度も実際の商用クラウドサービス上で実現し評価実験を行っている.一部の成果は,オープンソースとして公開予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
移動履歴情報に対するプライバシ保護に加え,IoT における幾つかのセンサーデータに対するプライバシ保護に対するプライバシ保護技術の一つが実現できた.また,秘密分散を用いた安全なデータ保存手法についても実現できた.これらを合わせた,プライバシ保護基盤のプロトタイプについてもおおよそ実現できている.次年度では,個々人が個別のプライバシ要件を設定する場合における要件の調整方法について研究を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
26年度及び27年度までで,これまで移動履歴情報に対するプライバシ保護に加え,IoT における幾つかのセンサーデータに対するプライバシ保護に対するプライバシ保護技術に関する研究を行った.これらでは,局所的にユザのプライバシ要件を満たすことはできている.その一方で,多数のユーザが同時に利用した場合において,どのようにしてプライバシ要件を調整するのかという点が未解決である.次年度では,このプライバシ要件のネゴシエーションに関する研究を中心に行う.我々は,この分散環境において異なる要件をどのように調整するのか,という点について別の研究領域ではあるものの知見がある.具体的には Software Defined Network において,異なるネットワークの接続時に発生するセキュリティ要件の調整について研究を行っている.ここでの知見は,本研究においても有効であると考える. また,これまで対象としてきたデータは,表形式あるいはストリーム形式のデータである.次年度には,対象のデータタイプを拡張し,グラフ形式などにおけるプライバシ保護技術についても取り組む. 最後に,以上の研究で得られた成果をもとに,プライバシを考慮した様々なデータの利活用基盤の開発も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
計算方法の改良により,評価実験に用いていたクラウド利用料を削減できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
評価実験のためのクラウド利用料及び研究成果発表に使用する.
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