研究課題
マインドフルネス認知療法のような介入では、うつ病などの疾患を持つ患者が、数ヵ月の瞑想的訓練を通して心理状態の望ましい方向への変容を示すことが報告されている。本研究では、マインドフルネスに関連する実践による成人の心理および生理機能の変容を、質問紙調査および自律神経計測によって検討した。第1に、丹田呼吸法などの瞑想的方法に基づく読書法 (速読法) の訓練者、および非訓練者の日常における心理状態を、複数の心理評定尺度をもちいて検討した。その結果、訓練者では非訓練者よりマインドフルネス、幸福感、ポジティヴ気分の得点が有意に高く、抑うつの得点は有意に低かった。また訓練者群において、マインドフルネスおよび幸福感の得点は、訓練期間および日常の読書速度と正の相関を示した。これらから、瞑想的実践の継続が心理状態におよぼす効果は、読書のような日常的に重要な認知にかかわる訓練にもあてはまることが示唆された。第2に、瞑想の実践者ではない日本人を対象に、読書習慣と心理状態との関連を検討した。その結果、日常の読書時間や読書速度が、マインドフルネスの増大や抑うつの減少といった、望ましい心理状態に対応していた。自己観察や注意持続など、マインドフルネスと共通する心的資質が読書に含まれており、それらが望ましい心理状態に寄与している可能性が示唆された。第3に、ヨーガ熟達者の瞑想中における自律神経活動を、生理計測システムNeXus-4によって計測した。その結果、「愛しています」というマントラ (真言) を心内で唱える瞑想では、自身の呼吸に注意集中する瞑想よりも心拍の増大が少なく、皮膚コンダクタンスの減少も少ないといった、瞑想テーマによる自律神経活動の差異が見られた。これらから、ヨーガ熟達者は、瞑想のテーマ設定によって身体の生理状態を能動的に切り替えていることが示唆された。
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青山心理学研究
巻: 16 ページ: 45-54
Technical Report, Japanese Cognitive Science Society
巻: 74 ページ: 1-13
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