左右が反転した立体音響空間をウェアラブルに実現し,この特殊空間への約1ヶ月間に亘る接触時における順応過程を脳磁界計測法を用いて調べた.この接触によって,新しい統合ルールに基づいて情報間の誤差を補正する知覚と関連した早い順応,統合処理の優先度を変化させる行動と関連した遅い順応,およびそれらの中間過程の存在が明らかになった.また早い順応と遅い順応は,各々,脳リズムと誘発応答に反映されていると考えられた.マルチモーダル感覚情報処理は,一般にユニモーダルな脳活動の和では説明できない付加活動の観点から議論されてきたが,動的特性を有する構造化された脳リズムも重要であることが本研究によって明らかになった.
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