研究課題/領域番号 |
26730082
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡崎 由香 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10718547)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | TMS-EEG / アルファ波 / 注意 / 位相同期 |
研究実績の概要 |
感覚器官から外部情報を受け取って意識的経験を生じさせるまでに注意による情報選択が行われている。情報選択がどう実現されているかについてα波パワーの抑制機能が関わっていることが多くの研究で示唆されている。本研究の目的は注意誘発性のα波の調節度合いに応じて刺激に対する皮質反応性や領野間結合強度が変化することを直接的に示すことである。そのために注意課題中に経頭蓋磁気刺激(TMS)と脳波(EEG)を計測し、刺激誘発性の活動伝播を時空間的にトレースする。
注意課題は手がかり刺激(矢印)を先行して呈示し、被験者の注意を右または左視野に誘導するポズナーパラダイムを用いた。また注意を誘導した視野に反応を要求する標的刺激(±2度傾いた縦縞)が呈示される試行とされない試行をランダムに繰り返し、後者の試行においてのみ右または左半球の初期視覚野にTMSを印加した。
TMSを印加する半球内での注意によるα波パワーの増減を調べるため、手がかり刺激と磁気刺激間の脳波データ対してFFTを行い注意誘発性のα波パワー変調求めた。α波パワーに応じた刺激の効果を調べるため、ウェーブレット変換から位相情報を取り出し位相リセット、領野間の位相同期を調べた。その結果、注意によってα波パワーが減少した半球では位相リセットが起こりやすく、異なる領野間の位相同期が増大していることが分かった。この結果は注意を向けている半球でαパワーを減少させることで、入力に対する位相リセットが起こりやすくなり局所的な皮質反応性の増大をもたらしていることを示唆している。また局所的な位相リセットの高まりが領野間の位相同期の増大をもたらしていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TMS-EEGの実験手法とアーチファクト除去法を確立し、α波パワーに応じた皮質反応性と領野間結合に関する解析は概ね完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
今回確立した手法や知見から、脳卒中患者における活動伝播とリハビリによる可塑的変化について検証する。脳卒中などによって片半球の機能を局所的に失った結果、どの領野間のネットワークが同時に損なわれているかなどを検証する。さらにリハビリテーションによる機能回復はその要因について不明な点が多く、同じ訓練を行っても効果に個人差が大きい。リハビリの効果は発症からの経過時間で大きく異なるため、ネットワークの再編成が行われると思われる時期から経時的にTMS-EEGの同時計測を行う。具体的にはリハビリ前とリハビリ中を次の3つの期間に分ける:急性期(発症直後~数週間)、回復期(数週間~数ヶ月)、維持期(数ヶ月~6ヶ月目以降)。TMSは閉眼時における損傷領域および反対側半球の非損傷領域へ行う。リハビリ前の実験からどの領野間のネットワークが同時に損なわれているかなどを検証する。またリハビリ期間中のそれぞれの時期で皮質反応性とその活動伝播がどう変化するかを観測し、NIHSSやFIMなどの行動指標との相関を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助員の雇用が予定より短期間だったため、使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究補助員の雇用に使用する
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