研究課題/領域番号 |
26730083
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
高橋 純一 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (10723538)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム / パターン認知 / 変化検出課題 / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,パターン認知に関する「①心理物理実験(行動指標)」および「②生理実験(事象関連電位)」を行なうことで,自閉症スペクトラムのパターン認知機構を解明しようとするものである。「①心理物理実験(行動指標)」において,統制群では視覚的短期記憶に対するパターンの複雑さの影響が見られた。一方で,自閉症傾向群ではその影響が認められず,単純なパターンであれ複雑なパターンであれ,記憶成績が高かった。この現象を生理指標の観点から証明するため,「②生理実験(事象関連電位)」を行なった。分析では,パターン認知処理の負荷を示唆すると考えられている「P300」を指標として検討した。結果から,統制群では,複雑なパターンの方が単純なパターンよりもP300の振幅が大きかった。つまり,複雑なパターンに対する処理負荷が高かったと言える。一方で,自閉症傾向者では,パターンの複雑さに関わらず,P300の振幅が小さかった。つまり,複雑なパターンであっても,単純なパターンと同様に処理負荷が小さいと推測できる。以上の行動実験および脳波実験が終了し,論文化を行なった。 一方で,実験中および論文の査読中に,自閉症スペクトラムの個人差変数としての信頼性に関する疑問が生じた。そのため,他の個人差変数(特に,アレキシサイミア:感情障害)を導入することで,新たな観点から検討を始めた。アレキシサイミアは多くの精神疾患や発達障害の背景因子と考えられている。そのため,アレキシサイミアのパターン認知処理機構を検討することで,既に本研究で得られている自閉症スペクトラムのパターン認知機構を新たな角度から複合的に検討できるものと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に加えて,アレキシサイミアの顔パターン認知実験も実施することができた。新たな個人差変数を導入することができ,順調に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
自閉症スペクトラムを対象としたパターン認知実験は,データをまとめて論文化の最中である。今後は,アレキシサイミアを対象とした実験を行なうことで,自閉症スペクトラムとアレキシサイミアとの関連についてパターン認知の観点から検討を行なう。アレキシサイミアは,多くの精神疾患や発達障害の背景因子として想定されているが,未だその実態は解明されていない。本研究の手法をアレキシサイミアにも応用することで,新たな展開を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請課題は平成26年度より研究を開始したが,科研採用と同時に現在の研究機関に異動した。これまでの実験(特に脳波実験)は,他の協力機関において実施してきた。現在所属している研究室には脳波計がなく,現況で購入可能なものを購入するため,残額の予算を平成27年度の扱いとした。
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次年度使用額の使用計画 |
現在の残額予算で購入可能な脳波計を購入し,新たな脳波実験を実施する。
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