研究課題/領域番号 |
26730084
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
矢田 紀子 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (60528412)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 質感 / 金属感 / 主観評価実験 / 評定尺度法 / 主成分分析 / 回帰分析 |
研究実績の概要 |
質感を生み出す要因となる特徴量としては物体の色,形状,表面の反射率,粗さ,透過率などが考えられるが,具体的にどのような質感にどの特徴量が関係しているかは明らかにされていない.一方,コンピュータグラフィックス(CG)で生成した画像の質感にどのパラメータがどの程度寄与しているかという情報は技術者の経験による暗黙知であり,定式化は困難である.本研究では視覚から得ている質感を定量的に捉えるための質感空間の構築を目指しており,本年度は質感らしさを表す指標を決定するために,主観評価実験による質感の心理尺度データ収集を行う計画であった. 本研究では,質感の中でも特に物理情報と質感の関連が付けやすいものとして金属らしさに注目した.金属物体を対象としてCGで作成したサンプル画像を用いた主観評価実験を行った.まず物体の反射特性に基づいて表面の粗さ,拡散反射係数,映り込みの割合というCGパラメータを用いることとした.これらのパラメータを様々に変化させたCG画像を作成し,各CG画像に対して被験者による主観評価実験を行う事で各画像がどの程度金属らしく見えるかを測定した.さらに,人間が直感的に分かりやすい質感スケールを構築し,物体の物理情報から質感の指標を求めることを目的として,主観評価実験結果に基づいて心理尺度である金属知覚とCG特徴量との関係を解析した.主観評価実験の結果を主成分分析と重回帰分析を用いて解析し,金属質感スケールの軸を2本として各軸を目的変数,CGパラメータを説明変数とする式を求めることで,軸上の数値の変化が金属らしさの変化に対応するような金属質感のスケールを提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では,主観評価実験による質感データの収集を行う計画であった.これについて,CGで作成した308枚の画像に対して20代の男女23名による主観評価を評定尺度法を用いて行い,計画通りデータの収集を行うことができた.さらに,収集したデータに対して解析も行い,次年度の計画にある質感に関係する特徴の同定と質感軸の決定についても着手する事ができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は質感に関係する特徴の同定と質感軸の決定と,画像計測による実物体の質感の定量化を行う.質感軸の決定に関しては,研究の最終目標である質感空間の構築を行うためには互いに独立な質感スケールを求める必要があるが,本年度に着手した方法で提案した金属質感スケールでは2つの質感軸の独立性を考慮できていない.このため,パラメータをさらに新しく作成してさらに検証を行っていく.また,画像計測による実物体の質感定量化を行うために,実物体の計測と画像取得を行い,物理量と画像特徴量の関係性を定式化する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が2014年12月から産前産後休暇を取得したため当初計画していた学会への参加を見送り,旅費を執行する事ができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に行う事ができなかった学会参加を平成27年度に行うことで使用する.
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