コンピュータービジョンで対象とする推定問題では、主要な定式化としてエネルギー最小化がある。本研究は、その主要な解法の一つである高階グラフカットの理論的な解析を行う。グラフカットは効率的に離散最適化問題を解くことができるが、既存のアルゴリズムでは扱える問題のクラスに近年まで制限があった。2011年以降、より複雑なエネルギーによる定式化を扱うことができるようになり、適用可能な問題の範囲が広がり、問題を解く能力を向上させる可能性が上昇した。しかし、計算コストの増加はもとより、どのような高階エネルギーを定義すべきかという点はいまだ未解決である。 本年度は、三次元医用画像の複数臓器同時領域分割について様々な方法の検討をし、前年度中に報告できなかったスーパーボクセルによる高階エネルギーの具体的な設計と理論的解析の結果を国際会議で報告した。これは、我々が過去に行った複数の研究結果を統合するものであり、また今後さらに研究をすべき点を明らかにしている。特に、医用画像解析では、ディープラーニングに代表されるような大量のサンプルデータを必要とする機械学習手法を適用するのが難しいため、理論的な特徴量探索が重要である。スーパーボクセルによる高階エネルギーはそのような高次特徴をうまく抽出していると考えられる。 また、グラフカットによる別の応用として、動画像に対して、ピクセルの空間への拡張手法であるスーパーボクセルの軌跡をもちいた手法を検証した。通常、これについても、国際会議で報告を行った。これらは、今後の高階エネルギーの設計の柔軟性の有効性を高く示しており、引きつづき調査を進めていくべきである。
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