本研究は,3次元化が進んでいる視聴覚コンテンツに対し,同じく3次元化された触覚情報を組み合わせることで次元を揃えた質の高い体験の提供を実現することが目標である. 初年度では,連続的な振動刺激における強度知覚と心理物理学の各法則との関係性解明とモデル化を進める一方,指以外の新たな部位に触覚情報を提示する手法の検討を行なった. 次年度は,実際にタブレット型端末を用いた基本的なアプリケーションの製作と動作の検証を行い,タブレット型端末と振動デバイスのみでアプリケーションが動作する環境を整えた.また,指意外の新たな部位として足に着目し,指爪上の振動提示による凹凸覚・質感提示を足指に対しても行った結果,テクスチャが足裏に知覚されることを発見すると共に,歩行バランスの安定化にも寄与する可能性が高いことが分かった. 最終年度は,複数のOSに対応したクロスプラットフォームでの開発環境を整備すると共に,振動デバイスを無線化し,拘束の少ない体験環境を構築した.次に,本プラットフォームにおいて,これまでに設計した振動強度モデルを用いたアプリケーションを作成し,従来の提示手法と比較してより立体的な形状が認識可能であることを示唆した.さらには,足への触覚提示デバイスのプロトタイプを製作し,実際に多くの人へデモ展示を行うことで,様々な地面の凹凸やテクスチャを知覚可能であることを確認した. 以上から,本研究期間において,目標とする質の高い視・聴・触覚コンテンツを制作可能な場を作り出し,さらには提示部位を手以外へ拡張することも実現した.本研究の成果は,現在大きな盛り上がりを見せている触覚コンテンツの発展に大きく寄与することが期待できる.
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