拡張現実感 (Augmented Reality; AR) 分野における実用的なアプリケーションとして,実物体の内部にある物体を仮想物体として実物体表面に重畳描画し,現実であれば手前の物体に遮られて見えない内部の物体を観察可能にするものがある.しかし,実物体の内部にある仮想物体を単純に実物体の表面に重畳描画すると,本来見えないはずの仮想物体が何にも遮蔽されずに見えていることから,「見えている仮想物体は実物体表面よりも手前にある」と知覚されてしまい,仮想物体の奥行きが正しく知覚できないという問題がある.これに対し,我々は前研究においてランダムドットマスクを実物体表面に付与することによって,「実物体表面に開いた多数の小孔越しに内部の仮想物体を観察している」ように観察者に知覚させる手法を提案した. 本年度は,提案手法を用いたアプリケーションを作成し,学会にて技術展示を行い,実際に多数のユーザに体験させ,多数の意見を得た.また,提案手法では,内部の仮想物体をマスク越しに観察するため,見易さが低下していた.そこで,マスクを半透明にすることで,見易さと奥行き知覚の向上の両立を目指した.これに関して,マスクの透明度と,見易さ・奥行き知覚の精度トレードオフについて評価実験を行った.
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