本研究計画の基盤となる、統計的なスキル推定手法の研究を実施した。当初計画通り英文和訳の仕事を対象にし、英文和訳において、語彙知識を利用して翻訳能力を測る新しい確率モデルを提案した。英文翻訳作業時に、英文中の各単語を知っているか否かを作業者に答えさせ、これを語彙知識として用いる。提案モデルは、作業者が高い翻訳能力を持つ場合と低い翻訳能力を持つ場合で異なる語彙知識回答モデルから構成される。このモデルを用い、語彙知識回答結果と、単語・翻訳元文章の特徴から推定した難易度を利用して翻訳能力を推定する。提案手法は、語彙能力と翻訳能力を関連づけることで、翻訳結果に対する外部評価を用いることなく語彙知識回答のみから作業者の翻訳能力を推定できる点が画期的である。提案手法が、各英文に適した翻訳者の自動的に割り当てにも有効であることを実験で示した。また、語彙能力と翻訳能力の関連づけが妥当であることをデータから示した。本研究成果は国際会議に投稿中である。
語彙知識という比較的扱いやすい情報が翻訳能力推定に有効という知見は、本研究計画の遂行上大変重要である。単語のトピックと翻訳能力の関連づけによる多様な翻訳能力表現が期待される。また、翻訳元文章中の単語を仕事の要求能力の表現に活用できると考えられる。さらに、作業者の目標能力を単語・トピック・文章等で表現させることで、現在の能力から見た目標能力達成度を推定しやすくなる。
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