研究課題/領域番号 |
26730117
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
小川 泰右 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 特任助教 (60586600)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サービス設計 / プロブレム / コミュニケーション支援 / 領域横断 |
研究実績の概要 |
患者中心医療を実現するためには,多様な専門性(医師・看護師など)を横断して,医療サービスの設計意図を共有することが求められる.医療サービス知識には,疾病の治療手段など医学的な知識と,疾病や治療が患者の生活あたえる困難への対策方法などの知識が含まれる.医療サービスを設計するためには,ステークホルダーが専門ごとに存在する多様なプロブレム(疾病やそこから生じる生活上の困難)を相互に理解することが求められる.それぞれの専門性における知識の蓄積や教育では,プロブレムの発生メカニズムと解決方法の詳細を理解することが要請される.しかし,それをステークホルダーを横断してのコミュニケーションで要請することは現実的でない.本研究の目的は,いかに専門知識に立ち入ることなくプロブレムの相互理解を可能にするのか,そのためのサービスモデリング手法と手法に基づくコミュニケーション支援システムを具体化することにある. 平成26年度においては,多様なプロブレム概念を専門性を越えて検討するための枠組みとして,プロブレム間の因果関係を表現するモデリング手法を構成した.このモデリングでは,患者の状態概念とプロブレム概念を峻別すること,プロブレムの生滅にいかに医療行為が介在しているかを表現する.一般的にプロブレム間の因果関係は病態など患者の物理的な状態に還元されて説明される.これが専門性を横断してのコミュニケーションの負荷を高めると考えた.そこで患者の物理的な状態とプロブレムとを区別することで,プロブレム間の因果関係の詳細にはあえて立ち入らないようコミュニケーションを誘導する手法を構成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(26年度)は,患者が抱えるプロブレムと患者の物理的な状態とを概念的に峻別したうえで,プロブレムの因果関係を表現するモデリング手法を具体化した.このモデリング手法では,医療サービスがすでに存在するプロブレムをどのように低減・消滅させるのか,または副作用としてあらたに生じさせるのかを表現することで,医療サービスの設計意図を明示する.サービス設計に関わるステークホルダは,プロブレム間にどのような因果関係があるのかについて,因果関係の詳細なメカニズムについて立ち入ることなく,あくまで因果関係が存在することとそこに医療サービスがどのように関係するのかのみに集中した議論を可能にするものである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度(26年度)の成果であるモデリング手法を,地域医療連携でのコミュニケーション支援,具体的には患者が転院する際の状態説明と,医療サービスの連携が合理的になされているのかの検討に用いる.試行の結果を分析することで,手法が意図した効果を発揮しているかどうかを検証する.国内学会の研究会および国際会議での報告を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表について,当初予定していたシステムの試用実験が次年度(平成27年度)以降となり,それにともなうシステム開発,謝金にかかる経費が未使用となった.
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次年度使用額の使用計画 |
システム試用実験を次年度(平成27年度)に行うこととし,実験にもちいるモバイル器機の購入に充てる..
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