28年度はグラフ上のラベル推定問題に対して、自動的に最適なグラフを構築するための手法についてジャーナル論文発表を行った。グラフ上のラベル推定問題はグラフ(ネットワーク)として表現されたデータの各頂点に付くラベルを推定する問題である。グラフは類似性の高いデータの間に辺を持ち、類似性が高いほど辺に大きな重みをつける。論文では精度の高いラベル推定を実現するグラフの重みを多様体学習の考え方に基づき提案した。グラフ上で未知のラベルを推定する場合には、ラベルがグラフ上でなんらかの潜在的な関数関係を持つことを仮定する。多様体学習ではグラフによってデータの潜在的な低次元構造を近似することができる。提案法はこの考え方に基づいて、高次元のデータの潜在的に低次元の構造を局所線形近似と呼ばれる多様体学習で推定し、グラフとして表現することで、本質的な低次元構造に沿ったラベル推定を行う。手法の性質を数理的に解析したうえで、画像データなど、いくつかのベンチマークデータにより提案手法の精度の高さの検証を行った。また別の課題として、部分グラフから予測モデルを構築する手法の効率化に関して、国際会議発表を行った。この手法では組み合わせ的に存在する部分グラフから所望の目的変数を予測するために重要な部分グラフを効率的に発見するための方法論構築を行った。この方法は、罰則付き線形モデルの意味での最適性を保ちながら、計算を実行することができる。化合物のグラフ表現に基づく解析によって提案法の効率を検証した。
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