研究実績の概要 |
ネットワークの障害に対する頑強性に関して様々な数理的研究がこれまでに多数行われてきた.しかしながら,その多くの研究ではネットワークのノードはダイナミクスを持たない静的なものとして解析が扱われてきた.近年,ネットワークのノードがダイナミクスを持つような動的なネットワークに対してのネットワーク頑強性(動的頑強性)に関する研究が行われてきている.本研究では,これらの動的な素子から構成されるネットワークに対して,その構成要素の一部が破損しネットワークが保持するべき機能が失われた場合を対象としている.この失われた機能をより効率的に回復させる方法の基礎的な理解を目的とした数理的研究や,これらの基礎的な理解を得るために必要な土台であるネットワークの頑強性に関する数理的研究が本研究の目的の一部である. 最終年度である本年度は,昨年度までの解析結果に基づいて,ネットワークの振動回復及び頑健性の数理的理解をより基礎から深めるために,ヘテロ性を持つ興奮性位相振動子結合系の解析を行った.その結果,システムが停止状態と振動状態の間を変化する構造を分岐理論によって詳細に解析し,その構造のパラメータ依存性を解析した.その他にも頑健性の理解を深めるための幅広い基礎的な研究として,ネットワークの動的頑強性とも関係することが知られているネットワーク中心性をネットワークの異常検知に応用する研究などを行った.上記の成果の一部は国際会議 IEEE DSAA 2016, Dynamics Days Europe 2016, Dynamics Days U.S. 2017 や日本物理学会 第72回年次大会などで発表を行っている.
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