研究課題
信号処理工学を含む様々な工学において,推定対象の先験情報を活用する高性能アルゴリズムが多数提案されている.多くの場合,アルゴリズムは最適化理論の知見を活かして構成されるため,先験情報を数学的に表現することが重要となる.既存手法の多くは,先験情報を凸集合を用いて表現し,凸最適化理論を用いる方針が採用されている.一方で,非凸集合を用いて表現される先験情報を活用するアルゴリズムが待望されている.実際,推定対象のスパース性や推定行列の低階数性など,近年広く活用されている先験情報は,ある種の非凸集合が自然な表現を与える.それらを直接取り扱うことは一般的に困難であると考えられており,凸緩和するなどの手続きを介して活用されている.本研究では「閉凸集合の和集合」として表現できる非凸集合に着目し,先験情報のさらなる効果的活用を実現することを目的としている.今年度の主な成果として,昨年度の成果(特定の階層型最適化問題[最適化問題の解集合上で別の目的関数を最小化する問題]に対する反復解法)を含めたbook chapterを執筆した.以下,その反復解法の概要を述べる.データサイエンスの分野において,推定対象のスパース性を活用する手法が注目されている.広く使われているLassoの定式化では,スパース性の活用度合いを決定するパラメータを導入し,このパラメータを適切に選択することにより,優れた性能を実現している.一方で,このパラメータの選択は一般に困難な問題となる.近年,パラメータ選択問題を避けるため,「適切なパラメータに対応する推定結果を解として持つことが期待される非凸最適化問題(問題P)による定式化」を用いた強力なスパース推定法が提案されている.この問題Pの解集合が「有限個の閉凸集合の和集合」であることに着目し,問題Pの解集合上で新たな目的関数を最小化する問題を定式化すると共に,その反復解法を提案している.
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Splitting Algorithms, Modern Operator Theory and Applications
巻: (to appear) ページ: 74pp.
IEEE Transactions on Signal Processing
巻: 66 ページ: 6363-6376
10.1109/TSP.2018.2876328