本年度の目標は,昨年度開発した「人間の行動予測を組み込んだ安全性指標」をもとに,制御信号レベルでの制御手法,タスクレベルでの行動計画手法などを開発し,実用的にロボットを安全に行動させる技術を確立することにあった.我々は,昨年度からの研究により,安全性指標の実装における困難さを発見した.すなわち,安全性指標に用いる人間の行動予測は,「人間が自分を最も危険に晒す」という最悪のケースの想定から算出されるものであり,この計算に最適化計算を用いている.この計算時間が,単純な実装では,ヒューマノイドロボットと人間のような複雑な状況下だと数百ミリ秒程度掛かり,制御に用いる上で困難であった.そこで我々は,離散化による探索アプローチと,勾配法を用いたアプローチを実装し,安全性指標の信頼性を維持しつつ計算速度を向上させる方法を模索した.次いで,我々は安全性指標を単純なモデル(球体同士のモデル)から,ヒューマノイドロボットと人間の間のモデルに拡張した.この安全性指標を,昨年度開発した制御手法・一般化VM (Velocity Moderation) に組み込み,まずシミュレーション環境で実験した.この環境はヒューマノイドロボットが人間と共同作業する際の安全性技術を検証するために我々が開発しているものである.過去に提案した制御手法である Asymmetric Velocity Moderation (AVM) などと比較し,有効性を実証した.さらに,ヒューマノイドロボットHRP-4を用いた評価実験も行った.一方で,サブタスクが連続して遷移していくような,より複雑なタスクにおいて,安全性指標などをコスト関数とし,行動を計画する手法の開発も行った.一連の成果を投稿論文1件,国際会議2件で発表した.
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