研究課題/領域番号 |
26730139
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
横田 祥 東洋大学, 理工学部, 准教授 (40434386)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感覚行動システム / 同調傾向 / 身体動作 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,アクティブシニアの運動意欲を保つ仕組みを見出すことを目指し,興味を持続させる,人と人工物との運動コミュニケーションという新たな方法を提唱することである.この特徴は,心理学における同調効果を基に,模倣性,他者性,意外性を組み込んだ同調モデルにある.このモデルを具現化するため,人の動きに連動する人工物ミミック(mimic)を設計し,モデルの実証実験を行う.本年度は,(1),(3)のテーマを実施した. (1)歩行し直角に右折する単純な動作を例題に,複数の被験者動作をモーションキャプチャで取得した.そして被験者毎に異なる動作時間等の個人差を可能な限り排除した動作の表現方法を考えた.このために,位相空間で動作を表現した.腰の速度と角速度を2軸とした2次元の位相平面に被験者の動作をプロットすることで,時間空間ではことなる被験者の動作も,おおよそ,同じような楕円軌道を描けることが分かった.したがって,人間動作を位相平面で表現することにより,個人差を吸収して表現できることが分かった. (3)他者性,意外性の表現方法を考えるために,モーションキャプチャで取得した被験者の動作を,CGで作成したmimicに実装し被験者の前面に投影した上で(これを模倣性とした),mimicに実装する動きに遅れや,インパルス状のノイズを加え,被験者の印象を調査した.その結果,模倣性の動作から遅れが大きくなるにつれ,被験者は,提示された動作が自身の模倣ではないと感じるようになることが分かった.したがって,動作遅れまたは進みが,他者性モデルの一因であることが分かった.意外性については,モーションキャプチャのローパスフィルタのカットオフ周波数を高くすることで,模倣動作の上にノイズによるインパル状の動きが現れ,被験者はこの動きに意外性を感じることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の実施予定は,(1)「人間動作と模倣性の表現方法」,(2)「ミミックの設計方法」(3)「他者性,意外性を導入した同調モデル論」であった.このうち,(1)と(2)についてはおおむね順調に進展した. 年度当初に,(3)のテーマのための購入予定の視点計測装置と比べ,より高性能な装置(ただし当初購入額より高価)が別メーカから平成26年内に発売予定であることを知ったため,平成27年度配分額の前倒請求を実施して,この後発の装置を購入した.ただし,メーカーの発売が遅れ,納品された時期が年度末であったため,(3)のテーマに着手はしたが,十分な時間を確保できず,結論を得るには至っていない. 以上の理由で,本年度の全体の計画と比較し,やや遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,購入した視線計測装置を用いて,人が全身運動し,その模倣動作が提示された場合,人は身体部位のどの部分に注視するかを明らかにし,(3)「ミミックの設計」を推進する. その後,(5)の実験を実施しながら,(4)の運動コミュニケーションの分類と運動意欲の要因について調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
交付決定額と前倒し支払い請求額を合わせて利用し,本研究課題推進のために必要な視線計測装置を購入した. 前倒し支払い請求時の予定購入額より,実際の購入額が若干安かったために,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
この次年度使用額は,前倒し支払い請求して生じたものであるため,次年度使用額を計画通りに使用する.
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