本研究は,人の運動意欲を保つ仕組みを見出すことを目的として,興味を持続させる動きのインタラクションを考えた.この特徴は,心理学における同調効果を基に,(i)模倣性,(ⅱ)他者性,(ⅲ)意外性を組み込んだ同調モデルにある.このモデルを具現化するため,人の動きを測定し,人の動きを模倣するミミックを用意し,次の(1)~(3)のサブテーマを設定し,それぞれの知見を得ることができた. (1) 模倣性のモデル化:同調効果の基盤は動作を模倣することである.そこで,模倣される側が,模倣する動作を自身の動作であると感じる動作要素について,実験を通して検討した.その結果,模倣動作と感じる動作パラメータは両者の位相差(時間遅れ)であり,動作の振幅は,無関係であることが分かった.加えて,模倣動作と感じることができる時間遅れの許容値,300ms程度であること分かった. (2)他者性,意外性のモデル化:動作の時間遅れが,動きのインタラクションではユーザの印象に大きな影響を及ぼしていることから,ここでは,遅れ時間が異なる3つの動き(遅れあり,遅れなし,進み動作)を用意し,それぞれの動作に関する印象評価実験を行った.その結果,遅れ動作には他者性が認められ,進み動作には意外性が認められた.したがって,ミミックの動きの時間遅れをコントロールすることで,3つの特性(他者性,模倣性,意外性)を表現できることが分かった. (3)縮減できる自由度:腕振り動作を対象として,人と人の動きのインタラクションにおいて,模倣される人が模倣する人のどの身体部位に注目しているのかを,視線計測を通して,明らかにした.その結果,動きの先端(この場合は手)を注視し,肩や肘は注視しない傾向があることが分かった.
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