研究課題/領域番号 |
26730146
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
小川 剛史 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主任研究員 (10614323)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | BMI / NIRS / 実環境 / データベース / 機械学習 / 生活支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、二者間の自然なコミュニケーションにおける脳活動の同期パターンに対し、会話の内容や感情を脳情報に付加したタグ付脳活動データベースを構築することである。コミュニケーションを円滑にするための脳情報抽出法を開発し、ブレイン・マシン・インタフェースへの応用を目指す。その意義は、日常生活支援を促す工学的な目標に加え、生活支援のコミュニケーションに関わる脳活動のパターンを探索的に解析することで、コミュニケーションに関する脳内メカニズムの研究の端緒を開くことにある。 今年度は一般住宅を模した日常生活実験設備(BMIハウス)にて行った、二者間の協調・競合課題をオセロやジェンガなどの課題中の脳活動と一人称視点動画の情報から、行動タグ付き脳活動データベースを構築した。これを基に本研究を進める予定であったが、機器の故障により携帯型脳活動計測器が1台しか使用できなくなったことに加え、携帯型脳活動計測器で得られる情報量は非常に限定的であることが判明した。そこで、今年度は高次的なコミュニケーションである会話情報を直接用いるのではなく、基礎的な脳情報(情動・日常動作)を用いて日常生活のコミュニケーション支援を行うことを目的とした。 これを達成するために、2種類のデータベース、①実環境における日常的な情動変化に伴う生体情報と脳情報の同時計測により得られた生体情報・脳活動情動データベース、②日常生活動作を解読し生活支援に活用するための生活動作脳活動データベース、を構築した。これらの大規模データの解析を行うため、フィンランド・ヘルシンキ大学のHyvarinen教授と共に、解析法に関する具体的な議論を行い、解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初予期していなかった機器の故障により、複数人での同時計測実験を進めることができなくなったが、日常生活のにおける基礎的な脳活動情報に着目することにより、日常生活のコミュニケーション支援実現のための基礎データの取得およびデータベースの構築を行うことができた。 生活動作脳活動データベースにおいては27人分のfNIRSデータをBMIハウスにて計測し、データベースを構築することができた。解析を進めていくための環境整備を行うことができたため、今後の研究計画を順調に進めることが出来ると期待される。 生体情報・脳活動情動データベースについては、4種類の情動(快・不快・中性・混合)を喚起する刺激バッテリーを作成し、BMIハウスにおいて、25人分の脳波と生体情報(心電・呼吸・皮膚抵抗)を取得することができた。このデータに対し、刺激動画のラベルを付加してデータベースを構築した結果、快・不快の2通りの判別であれば約75%の精度で識別できることがわかった。日常的に起こりうる情動を脳情報から解読することができる可能性を示唆するものであり、情動に関する日常生活のコミュニケーションBMIの解読器のプロトタイプを作成に向けて、大きく進展することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、2種類のデータベースを用いて、実生活空間における二者間コミュニケーション支援に役立つ情動・日常動作の脳情報からの解読を試みる。研究を遂行するために解決しないといけない課題は、①最適な特徴量の選択および抽出方の確立、②未学習ユーザのBMI導入コストの削減の二つである。①については、単純な線形識別であるSVMだけではなく、データのスパース性なども考慮した学習法について検討する。②については、研究代表者が以前に提案した辞書学習法など用いて、未学習のデータでも短時間で調整を行い、最適な特徴抽出と識別が可能な手法にて問題解決を行う。また、大規模な脳情報データデータベースを用いて個人の認知機能の推定法の開発も併せて行うことにより、ユーザ個人の特性(長期間)と状態(短期間)を切り分けて取り扱うことにより、初めてのユーザへの解読器の適応性の向上を試みる。 これらの研究成果は、国内・国際会議にて報告し、論文化して科学雑誌へ投稿する。また、アウトリーチの一環として、一般向けの講演会・イベントなど行い、BMI技術の理解を広めていく予定である。
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