本研究の目的は、日常生活空間にて二者間のコミュニケーション支援を行うために、同期的な脳活動と会話情報に基づいて可視化するブレイン・マシン・インタフェースを開発することである。その意義は、日常生活支援を促す工学的な目標に加え、生活支援のコミュニケーションに関わる脳活動パターンを探索的に解析することで、コミュニケーションに関する脳内メカニズムの研究の端緒を開くことにある。 最終年度は、昨年度に計測された2種類のデータベース、①実環境における日常的な情動変化に伴う生体情報と脳情報の同時計測により得られた生体情報・脳活動情動データベース、②日常生活動作を解読し生活支援に活用するための生活動作脳情報データベースを基に、脳情報の解読方法の提案と、取得データへの適用可能性について精査した。 ①のデータベースに登録されている情動変化に伴う脳活動(脳波)の解読については、スパース性を仮定した独立成分分析(ICA)を導入し、被験者個人間での感情状態の解読制度の違いが何から生じるのかについて明らかにすることができた。②での脳活動(近赤外分光計測:NIRS)からの日常生活動作の解読については、時空間情報の基底を抽出する辞書学習を用いて解読することにより、他人の脳活動データを含めた場合においても、日常生活動作の解読が可能となる学習アルゴリズムを開発した。時空間情報の基底を抽出することにより、脳活動と計測時のアーチファクトとの弁別も可能になることが考えられる。また、個人の認知機能や個人特性に関して、fMRIで計測した安静時脳活動の大規模データベースを用いて、日常的な問題解決に必要な脳内ネットワークについて解明した。 これらの研究成果は、国内・国際会議にて発表を行った。また、アウトリーチの一環として中学生・高校生向けの講演会やワークショップを行い、脳科学やBMIついて関心や興味をもたせることができた。
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