本研究の目的は,引用関係を利用した検索において,その長所「キーワード検索では見つけられない適合文献を発見できる」を強化した新たな検索手法を開発することである。本年度は,主として以下の二つのことをおこなった。 1. 昨年度に考案した「粗い共引用関係」に基づくネットワークの拡大のアイデアを,より効果的に検索に応用する手法について開発をおこなった。昨年度の手法は,「検索キーとなる文献と粗い共引用関係にある文献群」(検索キーとなる文献を引用している文献に含まれる語を手がかりにして語に基づく検索をおこない,そこで得られた文献群が引用している文献群)を共引用ネットワークに取り込むのみであった。本年度は,これに加えて,「検索キーと共引用関係にある文献からみて,粗い共引用関係にある文献」や「検索キーとなる文献と粗い共引用関係にある文献からみて,共引用関係にある文献」などもネットワークに取り込む文献の対象とする手法を考案した。昨年度に考案した手法と本年度に考案した手法とを検索実験により比較した結果,本年度に考案した手法の検索性能の方が優れていることが明らかとなった。また,ここで得られた結果について,国際会議のワークショップにおいて報告した。 2.昨年度におこなった「文献検索を目的とした場合の共引用ネットワークに適したモデルを検証する」実験に関して,その結果の分析作業をさらに進めた。文献調査や,引用文脈が持つ情報を利用しない場合と利用する場合との比較などもおこないながら,モデルについて考察をおこなった。
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