研究課題/領域番号 |
26730164
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
佐藤 翔 同志社大学, 免許資格課程センター, 助教 (90707168)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 情報行動 / 視線追尾 / 利用者行動 / 書架 / 情報探索行動 / 閲覧 / 視線追尾マーケティング |
研究実績の概要 |
本研究では利用者に新たな発見を促す書架排架法の構築を目的に、人の書架探索時の知覚を調査する実験を行っている。平成26年度は主として視線追尾装置を用い、図書タイトル順に排架した書架から図書を選択する際の視線の動きを明らかにした。 平成27年度は、1) 平成26年度と同様の実験環境下で、図書の排列を分類順に改めた場合の閲覧者の視線の動きに関する実験、2) 図書の色・背の文字のフォントといった図書デザインが被験者の視線移動・図書選択に与える影響についての実験、3) 図書選択にかけられる時間が被験者の図書選択そのもの及び自身の選択した図書に対する満足度に与える影響についての実験、という3種類の実験を行った。 これらの実験から明らかになった主な事項は以下のとおりである。1)の実験から、図書が分類順に並んでいても、タイトル順に並んでいた場合と被験者の視線移動のパターンは変わらず、最上段右端もしくは左端から書架を閲覧し、上から1段ずつ視線を移動し、その際には段によって視線の移動方向が左右反転した。2)の実験から、図書の色(寒色・暖色)や背の文字のフォント(ゴシック体・明朝体)は図書選択や図書の注視時間に有意な影響を与えないことが確認された。3)の実験から、図書選択にかけられる時間の長さは自身の図書選択に与える満足度に有意に影響する一方で、選ばれる図書の配置(面出しをしているものが選ばれるか否か)には影響を与えないことがわかった。 なお、平成27年度には平成26年度よりも精度の高い視線追尾装置を購入し、従来よりも精度の高い分析が実施できるようになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度実施報告に記した「今後の研究の推進方策」に記した内容(分類順に排架した書架を用いた実験、図書デザインが図書選択に与える影響の実験)を全て実行した。また、精度の高い視線追尾装置を購入する計画も実現し、実際にその装置を用いることで、図書1冊単位の精度が必要な図書デザインに関する実験も実施できた。さらに、当初予定にはなかった実験時間と図書選択の関係に関する実験も行えている。当初計画のうち、分類順に排架した場合について、分類記号を付与した実験については行えていないものの、おおむね当初の計画以上に進展しているといって構わないものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に予定したうちまだ実行できていない、分類順に排架した書架を用い、分類記号を付与した場合の視線移動に関する実験を行う。また、同じく分類順に排架した書架について、分類を示すサインを付与した場合に視線の動きがどう変化し、図書選択に影響するかの実験も行う予定である。 以上の追加実験を行うと同時に、平成28年度は各種の実験結果について対外発表を行うことにも注力していく必要があると考えている。具体的には図書デザインと視線移動の関係に関する実験結果について、国際学会にてポスター発表を行うことを計画している。また、一連の図書排架順と視線移動・図書選択に関する実験についてデータを詳細に分析し、学術雑誌論文としてとりまとめ、投稿する予定である。図書選択時間と満足度に関する実験については分析も完了しているため、こちらも学術雑誌への投稿を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は当初計画どおり視線追尾装置を購入したが、その費用が当初計画より若干安価に抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に計画していた実験のうち、まだ実施していない分類記号を付与した書架を用いた被験者実験の、被験者への謝金にあてることを計画している。
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