研究課題/領域番号 |
26730165
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
青木 千帆子 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (00584062)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子書籍 / 障害者 |
研究実績の概要 |
本研究では、活字での読書が困難な人々が利用する書籍データを作成・収蔵・流通させる機構、その効率的運用の仕組みを整備することを最終目標に、次にあげる3点の研究を実施する。 1.「盲人、視覚障害者及び読字障害者の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約」(以後、マラケシュ条約)成立を受け、条約批准に向けた国内外における著作権者と読書障害者による議論の動向を確認する。 2.国内における著作権者と読書障害者との対話の場を構築し、合意しうるアクセシビリティ向上のためのルールを作る。 3.著作権と読書障害者の読書に関する法社会学的検討 このうち平成26年度は、各国における図書館、教育機関、著作権者団体、障害者団体による議論の動向について文献調査をした。また、現在進行形で進展している電子書籍やそのデバイスに関するアクセシビリティ機能の検証や、著作権者の意識調査を実施した。さらに、平成26年度に日本において出版された電子書籍上位タイトルのアクセシビリティ実態調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は本務先の変更により、当初予定していた海外調査の実施が難しい状況になった。このため、調査の焦点を国内調査に絞り調査を実施した。平成26年度に実施した調査のうち、平成26年度に日本において出版された電子書籍上位タイトルのアクセシビリティ実態調査を実施した調査結果は、「2014年電子書籍フォーマットのアクセシビリティ対応状況に関する実態調査」として生存学創生拠点HP(http://www.arsvi.com/2010/1502ac.htm)において公開した。 なお、この調査結果ページは公開後10日間で1500件を超えるアクセスがあった他、国立国会図書館のポータルサイトにて紹介されるなどのインパクトがみられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、日本における著作権者と読書障害者とが対話し、合意しうるアクセシビリティ向上のためのルールについて議論する場を設ける予定である。このための事前調査として、平成26年度に続き、平成27年度に日本において出版された電子書籍上位タイトルのアクセシビリティ実態調査を実施する他、日本を含む各国における図書館、教育機関、著作権者団体、障害者団体による議論の動向について文献調査をする。 平成26年度は、平成25年度に成立したマラケシュ条約の影響のみならず、同年批准された障害者権利条約、平成27年度より施行予定の障害者差別解消法の影響により、国内のあちらこちらで障害者の読書の問題や、電子書籍のアクセシビリティに関する議論が展開された年であった。 このため、これら2つの国際条約及び1つの国内法に関する情報や関係者による議論の同行に関する情報を把握し、的確なタイミングで議論の場の設置を試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は本務先の変更により、当初予定していた海外調査の実施が難しい状況になった。このため、調査の焦点を国内調査に絞り調査を実施したところである。加えて、本務先の変更により、旅費の起点が京都から東京に変更になった。このため、国内調査旅費にも大幅な変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
1.平成27年度に日本において出版された電子書籍上位タイトルのアクセシビリティ実態調査に際し、関係者に聞き取りを実施する際の旅費等 2.著作権者と読書障害者とが対話し、合意しうるアクセシビリティ向上のためのルールについて議論する場を設けるに際し、必要となる諸経費の他、関係者間の調整や会場の手配等における協力者に対する謝金 3.上記調査の過程における議論を通し、著作権法を人間の相互行為という観点からとらえなおし、著作権問題と視覚障害者の読書の問題にある関係の非対称性について検討するための参考文献
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