本研究では,成績不振となってしまう可能性がある学生を早期に発見することを目的とし,ブレンディッド型の授業においてクラスタリングによるLMSのアクセスログの特徴分析を行った.クラスタリングは授業の1,6,12回目までのデータでそれぞれ行った.クラスタリング結果から1回目のデータでは,学習行動と成績とが関連するような特徴を把握することができなかった.しかし12回目までのデータでは成績不振者に共通する特徴を確認することができた.さらに,6回目のデータにおいても,成績不振者に共通する特徴を確認することができ,授業の早期の段階で成績不振に繋がる何らかの傾向を確認することが可能であることがわかった. 次に上記の結果に基づき,クラスタリングによって生成されたそれぞれのクラスターの特徴に着目し,成績不振者を早期に発見するためのルールの検討を行った. さらに,検討したルールに基づき,2013年度の数学1の受講生を対象に,実際に成績不振となる可能性のある学生の抽出を行ったところ,ほぼ2012年度のクラスターが成績不振者を含む割合と同等の成績不振者を抽出することができた. また,生成されたクラスターのうち,本稿では特に着目しなかったクラスターの詳しい分析を行うことで,学修支援に有効な学習者の傾向を発見できる可能性がある.具体的には,成績が良い学習者と悪い学習者が同一のクラスターに同程度含まれている場合等,簡単には傾向が判別できないクラスターである.このようなクラスターは,学習時間が長くとても勤勉だが,成績にはその学習時間が反映されていない学習者のような,本来もっとも学修支援を受けるべき学習者が存在する可能性がある.このような学習者の他のアクセスログ(ヒント利用回数等)のクラスタリング結果を分析することにより,学修支援に有効な知見が得られる可能性があると考えている.
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