本研究で実現すべき課題として,学習者の理解状況を表現するモデルの考案,理解状況に応じた学習支援方法の考案,学習活動の種類と発生タイミング分析手法の確立,学習支援機能の自動生成方法の確立,自動生成システムの実践的評価,を挙げている.平成27年度までの研究により,実践的評価以外を実現した.平成28年度ではその実践的評価として,学習者の理解状況同定能力を調査した結果,同定精度の低さと同定にかかる時間という二つの問題が明らかになった. 平成29年度では,(1)この問題の解決と,残る実践的評価である,(2)学習発生タイミングの検出能力と(3)自動生成した支援機能の学習効果の調査を行った. (1)理解状況同定能力の問題は,理解しているが正解できない状況と,ゲーム展開の都合により同定に必要な出題がなされない状況,が発生することに原因があった.そこで,システムがプレイヤーにばれない範囲でゲーム的には不正にゲーム状況を操作し,理解状況を同定するのに都合のよい展開にすることで問題を解決した.その上でも発生してしまう正解できない状況は,それをシステムが検出し理解状況同定に用いないことで精度を向上した. (2)ルールから学習機会発生状況を自動検出する機能について,56個の学習用ゲームを対象とし評価を行った.54個の学習用ゲームでは学習機会検出率96.4%であり,残り2個については記憶ゲームという形式で,この形式では手法が使えないことが判明した.また検出された学習機会で,学習者が問題を解く率は54個のゲームで63.8~78.4%の範囲となった. (3)支援機能の学習効果を,支援機能がある環境とない環境で実験群と統制群に分け調査したところ,被験者大学生12名と小学生8名のどちらであっても,同じ種類の問題を連続で間違える率に有意な差があった.
|