平成28年度は,検証ならびに公開フェーズと位置づけ,OSSのeポートフォリオシステムであるMaharaと本研究により開発したルーブリックプラグインを活用し,提案する学生の自己評価に基づいた授業改善サイクルモデルの検証を実施した.また,研究成果を学会発表やGitHub,OSSコミュニティを通じて公開し,講演等で報告した. 本研究にて開発したMaharaのルーブリック機能と本モデルの検証は,前年度に引き続き情報リテラシー科目にて実施した.学生の自己評価に基づいた学習到達度のチェックならびに授業レビュー機能によって授業改善での有用性を確認した.情報リテラシー科目という検証科目の特性上,授業では,日頃よりLMSを活用しているが,Maharaは別システムであるため,実際にMaharaを授業で利用する際には,プラグインのインストール,ユーザ登録,認証等といった管理面での事前準備や不要メニュー過多によりユーザが操作に困惑しないようにカスタマイズすることで混乱なく授業で実施できた.また,今年度より学内の1学科にて学内競争資金によるeポートフォリオ活用授業開発プロジェクトを立ち上げ,平成29年度からの実証授業に向けた研究プロジェクトにも発展しているところであり,予定した研究計画を全て達成できた. しかしながら,本モデルを他の授業に展開するにあたっては新たな課題も明らかになってきた.本研究で提案している授業改善サイクルモデルでは,授業がアウトカムベースとして設計されていることが前提であり,授業内での学習活動に対応したルーブリックを作成することが本モデルの出発点であるが,テスト作成と違い,そもそもパフォーマンス評価に馴染みのない教員には,ルーブリックを設計すること自体に不慣れであって作成そのものが難しい.本モデルが有効に機能するためには,このような課題に対する支援なども併せて検討が必要だと思われる.
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