研究課題
本年度は、シベリア大陸南東部に存在するバイカル湖において採取された湖底堆積物試料(試料長さ436cm)を用いて、高時間解像度の粒度分析、および蛍光X線分析をさらに進めた。これらの結果より、特に最終氷期後期において、粒度分布と無機元素比(K/Ti ratio)から示される降水量変動が良い一致を示す事が明らかとなった。これは、堆積物中の物理量データと地球化学データに矛盾がない事を示しており、つまり最終氷期後期におけるバイカル湖集水域の降水量変動が非常に高精細に復元できた事を示している。次に、粒度データおよびK/Ti ratioデータの数値解析を行い、その変動周期の解明を試みた。スペクトル解析の結果より、粒度分布は約1000年、K/Ti ratioは約1500年の周期を持って変動している事が明らかとなった。特に粒度データより得られた1000年周期は、太陽活動周期と近い変動周期であることが分かった。一方、粒度分布とK/Ti ratio の変動周期に約500年のズレが生じている。これはK/Ti ratioが堆積後の続成過程によって生じた可能性が考えられるが、さらなる検討が必要である。また、粒度分布と太陽活動周期の指標である14C変動との比較も進めた.Intcal 13との比較から、太陽活動拡大期において、バイカル湖集水域における降水量が減少している変動が示された。しかしながら、より高精度に太陽活動と降水量変動とを比較するためには、10Beやその他の地域における14C変動とのさらなる比較が必要である。大陸内部における降水量の周期的変動、およびそれを引き起こす要因に関してさらに研究を進めていく予定である。本研究成果の一部は、Goldschmidt 2015 Conference, Prague, 16-21 August 、シンポジウム「複数核種と複数原理に基づく宇宙線年代決定法の新展開」、弘前大学、2015年11月7日において報告された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた研究計画をほぼ予定通りに実施している。研究成果の一部を国際学会にて発表を行い、また国際誌への投稿を完了している。
次年度では、太陽活動周期と大陸内部における降水量変動周期との関連性を明らかにするため、放射性炭素分布から復元された太陽活動周期と、本研究によって得られた降水量変動をより詳細に比較し、その関連性に関して議論を進める。
当初の予定では、研究協力者であるLiege 大学(ベルギー王国)へ研究打ち合わせのためベルギーへ訪問する予定であったが、研究代表者と協力者の予定が合わず、メールでの打ち合わせのみになった。そのため次年度使用額が生じた。
次年度では論文発表に重点を置くため、英文校閲料、投稿料、掲載料の使用が予定される。次年度使用額はこの費用に充てる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件)
第17回AMSシンポジウム報告書
巻: 1 ページ: 125-128
巻: 1 ページ: 121-124