研究課題
本年度は、本研究課題で使用するエアロゾル輸送モデルNICAM-SPRINTARSの基本場再現性の検証を中心に行った。計算コストを抑制して高解像実験を行うためのツールであるストレッチ格子法の適用可能性を調べるために、2007年8月の関東地方を対象に、解像度約10kmで数値計算した。その結果、関東地方の中心部では、風や気温などの基本気象場の再現性は良好であったが、関東平野の山間部に近い前橋付近では、主にモデル解像度が不十分であるために、気象場再現性が比較的良くなかった。次に、エアロゾル場の再現性を調べるために、一次生成粒子の代表的な物質としてブラックカーボン、二次生成粒子の代表的な物質として硫酸塩に注目した。また、ストレッチ格子法の再現性を評価するために、準一様格子法を用いたNICAM-SPRINTARSを用いて、2007年8月の東アジアスケールにおいて両者の比較を行った。但し、計算機資源の制約により、準一様格子法を用いた実験は低解像度実験(220km格子)である。その結果、どちらの解像度のモデル結果も東アジアスケールでの月平均値の再現性は良好であったが、高解像度であるストレッチ格子法だけが総観規模の擾乱に伴う濃度変化を再現することができた。このことから、ストレッチ格子法は高解像度実験に十分適用でき、総観規模の変動を再現するためには高解像度モデルが必要であることが示された。逆に、月平均値の再現性向上を目指す場合には低解像度実験でも問題ないことも同時に示された。
2: おおむね順調に進展している
今年度目標としていた、ストレッチ格子法を用いたNICAMによるPM2.5シミュレーションを行うことができた。さらに、収集した観測結果との比較を通じて、NICAMのモデル問題点を把握することができた。同時に、準一様格子法を用いたNICAMによるシミュレーションとの比較も行うことができ、モデル分解能の違いによる影響評価も行うこともできた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
これまでのモデル検証をさらに進めるために、他のモデルとの比較を通じて、NICAMのモデル特性を把握する。同時に、異なるモデルの特性も把握し、より良いPM2.5シミュレーションのための理解を深める。領域対象モデルであるCMAQとの比較や、全球対象モデルであるMIROC-SPRINTARSとの比較を通じて、モデル間の差異及び共通の問題点を探る。
当初購入予定であったデータストレージの規格が変更され、データ容量を変更した結果、差額が発生したため。
差額分は、データストレージの追加購入分および周辺機器購入に当てる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件)
Geoscientific Model Development
巻: 8 ページ: 235-259
doi: 10.5194/gmd-8-235-2015
Environmental Pollution
巻: 195 ページ: 330-335
doi: 10.1016/j.envpol.2014.06.006