研究実績の概要 |
前年度までに本研究課題で使用するエアロゾル輸送モデルNICAM-Chemは領域対象実験に成功し、力学ホストモデルの差に起因する不確実性も議論できた(Goto et al., 2015a,b)。今年度はモデル検証をさらに進め、NICAM-Chem、WRF-CMAQ(Morino et al., 2015)、観測結果を用いて、PM2.5に含まれる成分である硫酸塩と黒色炭素に関する予測精度を比較検証した。その結果、一次生成粒子である黒色炭素の比較から、NICAM-Chemの方WRF-CMAQよりも日内変動性が激しいことがわかり、川崎・福岡ではNICAM-Chemの方が再現性は良いが、大阪・名古屋ではWRF-CMAQの方が再現性は良かった。また、二次生成粒子である硫酸塩の比較から、国内汚染寄与が大きいと考えられる川崎では両モデルの再現性は概ね良好であったが、越境汚染寄与が大きくなる場所ではモデル再現性が異なっていた。例えば隠岐ではWRF-CMAQの方が観測結果に近く、越境汚染をよく再現できていることが示唆された。しかし大阪ではNICAM-Chemの方が越境汚染寄与は小さいために、観測結果をよく再現できた。今後は比較期間を増やし、モデル間の相互比較によって共通の問題点を探りたい。
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