昨年度までに、土壌有機物の動態モデルの開発を目的とした土壌炭素データセットを構築した。今年度は、同データセットを研究資料として公開するための編集作業を行った。公開データはカンボジア国の森林66地点(新規公開の34地点を含む)、土壌層位数309点から構成される。メタデータとして、座標情報、植生型、最大深度、調査時期等が含まれる。データセットとその仕様書は2018年6月に、森林総合研究所の研究報告資料として公開される予定である。 次にデータセットを利用して、カンボジア国における土壌炭素の貯留量の広域推定を行った。カンボジアの国土を7616の格子点に分割したのち、データセットの土壌炭素貯留量を目的変数、植生型と月別気象値を説明変数とした重回帰分析を行った。月別気象値は英国のClimatic Research Unitのデータを利用した。回帰の結果、重相関係数は0.87であった。植生型および乾季の降水量は、土壌炭素貯留量に強く影響を与える因子と考えられた。 さらに、本研究課題において初年度に構築した、熱帯林の消失に伴い放出されやすい土壌炭素貯留量の推定手法を適用し、熱帯林の劣化に伴う土壌有機物の分解ポテンシャルの広域推定を行った。以上の成果は、途上国の森林減少抑制のための国際的メカニズムであるREDDプラスにおいて求められる、参照レベルの設定に貢献するものである。また2017年12月にリリースされた、全球土壌炭素マッピングプロジェクトGSOCの熱帯林地域の精度向上に資するものである。
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