研究課題/領域番号 |
26740014
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松井 仁志 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (50549508)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エアロゾル / エアロゾルモデル開発 / 気候影響 / ブラックカーボン / 新粒子生成 / 有機エアロゾル / 大気環境 / 領域3次元モデル |
研究実績の概要 |
大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)は太陽放射の散乱・吸収(直接効果)や雲・降水過程への影響(間接効果)を通して、地球の放射収支に対して重要な役割を果たしている。しかしながら、その推定の不確定性は非常に大きく、気候変動予測における大きな不確定要因の1つになっている。本課題では、これまでのモデルで十分に表現されてこなかったエアロゾルの素過程(粒子生成過程・有機エアロゾルの生成過程・ブラックカーボンエアロゾル(BC)の変質過程)を微物理・化学過程の理論に基づいて表現するエアロゾルモデルを開発する。そして、直接・間接効果の推定において重要となるエアロゾルの光学特性・放射効果・雲凝結核特性の推定精度の向上を目指すとともに、各素過程・パラメータの重要性・不確定性を明らかにする。
平成28年度は、これまでに開発したエアロゾルモデルを用いて、前年度に引き続き東アジア域におけるエアロゾルのモデルシミュレーションを行った。過去(1850年)から将来(2100年)にかけての化学成分の排出量の変化に対して、エアロゾルの各素過程がどのように応答し、放射強制力の推定がどのように変わるかを明らかにした。特に、窒素酸化物の排出量の変化が、過去から現在までの東アジア域のエアロゾル濃度の増大において極めて重要な寄与を占める可能性を示した(質量濃度の70%、放射強制力の40%)。また、BCの変質過程や有機エアロゾルの生成過程をモデルで詳細に扱うことによって、エアロゾルの排出量変化に対する応答が50~100%程度増大することを明らかにした。これらの結果は、排出量変化に対するエアロゾルの応答を精度良く推定するためには、詳細なエアロゾル過程の表現や気相反応・エアロゾル過程の相互作用の扱いが重要になることを示している。
これらの研究成果をとりまとめ、アメリカ地球物理学連合の査読付国際誌に主著論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、エアロゾル統合モデルを用い、BCの変質過程や有機エアロゾルの生成過程をモデルで詳細に扱うことによって、排出量の変化に対するエアロゾルの応答がどのように変化するのかを素過程の相互作用を含めて定量的に評価した。学会発表や論文出版も順調に進めることができた。これらの理由から本研究課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、これまでの知見を補足するための数値実験などを行う。 BC濃度とその放射強制力の推定において、重要となる発生源とその寄与を評価する。 また、エアロゾル・雲相互作用に対する新粒子生成過程の影響について、関連する物理化学過程の重要性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題をより精緻に実施するための期間延長申請を行った。その研究の遂行のために次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、大型計算機使用費・学会参加費・旅費などへの使用を予定している。
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