本研究では、PRKDC改変iPS細胞取得のための(1)プロモーターレス型ベクターを用いてiPS細胞の遺伝子ターゲティングを行うための条件検討と(2)ヒトNalm-6細胞からのiPS細胞の樹立の条件検討とともに、(3)ヒト神経幹細胞を用いた分化誘導の条件検討や(4)ヒトNalm-6細胞より作製したPRKDC破壊株を用いたDNA-PKcsのDNA修復における役割の解析を行った。 (1) 選択薬剤の添加時期や至適濃度等のさまざまな条件を検討し、プロモーターレス型プラスミドベクターを用いたヒトiPS細胞の遺伝子ターゲティング法を確立できた。 (2) 当初予定していた方法ではNalm-6細胞の増殖を抑えることができず、iPS細胞を取得することはできなかったが、iPS細胞を用いた遺伝子ターゲティングが可能となったため、今後はiPS細胞を用いた遺伝子破壊株の取得を目指す。 (3) PRKDC改変iPS細胞を用いた検討に先立ち、ヒト神経幹細胞を用いた分化誘導の条件検討を行い、誘導条件の一部を決定することができた。 (4) Nalm-6細胞より作製したPRKDC破壊株やDNA ligase IVとDNA-PKcsの両方を欠損させたLIG4/PRKDC二重破壊株を用いて、DNA損傷誘発剤への感受性を調べた結果、DNA-PKcsがDNA二本鎖切断修復経路の選択に関わる可能性が示唆された。また、この経路選択の分子メカニズムは、従来示唆されていたメカニズムとは異なる可能性があることがわかった。
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