研究課題/領域番号 |
26740020
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
砂谷 優実 金沢医科大学, 医学部, 助教 (70581057)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アポトーシス / リン酸化 |
研究実績の概要 |
DNA損傷修復蛋白質XRCC4は、DNA二本鎖切断の非相同末端結合修復を行うが、その他の機能はよくわかっていない。一方で、XRCC4は、アポトーシスで蛋白質分解酵素カスパーゼに切断されて35 kDaの断片(p35)となる。これまでに私は、マウスリンパ腫由来XRCC4欠損M10細胞株、M10にXRCC4を発現させたM10-XRCC4細胞株、およびカスパーゼに切断されない変異型XRCC4を発現させたM10-D265A細胞株を用いて、XRCC4切断のアポトーシスへの影響を調べた。その結果、カスパーゼによる切断依存的なアポトーシス促進能をXRCC4に見出した。さらに、この促進は、DNA-PK活性依存性であること、XRCC4のリン酸化Thr233残基が必要であること、およびp35のThr233は脱リン酸化されていることを見出した。本研究では、XRCC4のリン酸化体から脱リン酸化体への変換がアポトーシスを促進する引き金となるかを証明することを目的としている。 平成26年度は、XRCC4Thr233のリン酸化およびp35Thr233の脱リン酸化の両反応がアポトーシスを促進するかを明らかにすべく、以下を検証した。 a)Thr233の脱リン酸化はカスパーゼによる切断依存性か、b)カスパーゼによる切断とThr233の脱リン酸化の両者がアポトーシスの促進に必要か、c)Thr233リン酸化型のp35を大量発現させるとアポトーシスが抑制されるか a)については、M10-D265A細胞株にアポトーシスを誘導すると、カスパーゼに切断されない変異型XRCC4のThr233のリン酸化は減少しなかった。この結果から、Thr233の脱リン酸化のカスパーゼによる切断依存性を証明できた。b)については、カスパーゼに切断されない、かつThr233がリン酸化されない変異型XRCC4発現細胞株を作成した。現在、いずれかの変異型XRCC4発現細胞株とアポトーシスを比較している。c)については、Thr233をリン酸化状態に模したp35発現ベクターを構築した。現在、M10-XRCC4細胞株へ導入してアポトーシスを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では、以下の3項目について検証する計画であった。 a)Thr233の脱リン酸化はカスパーゼによる切断依存性か、b)カスパーゼによる切断とThr233の脱リン酸化の両者がアポトーシスの促進に必要か、c)Thr233リン酸化型のp35を大量発現させるとアポトーシスが抑制されるか a)については、計画通りの実験が終了し、Thr233の脱リン酸化がカスパーゼによる切断依存性であると考えられる結果が得られた。b)およびc)については、検証のための変異型XRCC4発現細胞株の樹立およびThr233偽リン酸化型p35発現ベクターの構築は完了し、現在ではそれらの材料を用いてアポトーシスを解析中である。c)に関して、当初研究計画で予想したThrからGluへの置換では偽リン酸化状態の効果が検出できないといった問題を避けるため、Gluとは別の酸性アミノ酸であるAspへ置換したp35発現ベクターも併せて構築した。 以上より、当該研究は、特筆すべき問題はなく、おおむね順調に進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降では、まず、平成26年度に引き続き、カスパーゼによる切断とThr233の脱リン酸化の両者がアポトーシスの促進に必要か、および、Thr233リン酸化型のp35を大量発現させるとアポトーシスが抑制されるかの検証を行う。そして、XRCC4Thr233のリン酸化およびp35pThr233の脱リン酸化の両反応がアポトーシスの促進の引き金となるかの結論を出す。次に、平成27年度以降の研究計画で予定した、アポトーシスにおけるThr233の責任リン酸化酵素および脱リン酸化酵素の同定を行う。そのためのリン酸化酵素阻害剤および脱リン酸化酵素阻害剤は既に入手してある。また、当初研究計画では、阻害剤の効果が不十分である可能性を予想していた。そのような問題が生じた場合には、RNA干渉による酵素の発現抑制を行う方法に変更する予定である。さらに、放射線抵抗性がん細胞にThr233非リン酸化型p35を強制発現させることにより、X線照射によるアポトーシスが亢進するかを調べる。具体的には、Tet-off systemを用いてテトラサイクリン濃度依存性にThr233非リン酸化型p35の発現量を調節できるU2OS株を樹立し、Thr233非リン酸化型p35の発現量とアポトーシスの程度に正の相関があるかを調べる。
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