本研究は,測定データがほとんどない日本の淡水系地下水中ラジウム(Ra)濃度の把握,飲料水としてRaを経口摂取した場合の内部被ばく線量評価及び淡水系地下水中のRa同位体挙動の解明を目的としている. 平成28年度は,開発した大容量淡水試料中の低濃度Ra同位体分析法をJAEA-REASERCHに投稿し,受理された.また,堆積岩地帯の北海道幌延地域,花崗岩地帯の岐阜県瑞浪地域(前年度より継続),226Raの親核種であるウラン(U)が高濃度と考えられる岡山県人形峠(風化花崗岩及びウラン坑道)で地下水を採取し,Ra濃度等を分析した. 本研究では,地下水を茨城県(15試料),幌延(12試料),瑞浪(19試料)及び人形峠(7試料)で採取した.大部分が酸化的で流動性地下水の水質組成を示した茨城県の地下水中の226Raは低濃度(0.07-2.9mBq/L)であり,岩石の種類による違いは見られなかった.幌延の淡水系地下水中の226Ra濃度(3.1-8.8mBq/L)は,汽水系地下水(51-267mBq/L)よりも低濃度であった.また,花崗岩地帯の瑞浪(8.0-91mBq/L)及び人形峠(21-1289mBq/L)の地下水中226Ra濃度は,茨城県及び幌延の淡水系地下水と比較して高濃度であった.得られた結果を用いて,仮に採取した淡水系地下水を1日2Lずつ1年間飲用した場合のRa(226Ra+228Ra)の経口摂取による内部被ばく線量の幾何平均値を評価した(茨城県:0.4,幌延:3.4,瑞浪:30,人形峠:38μSv).幌延,瑞浪,人形峠の地下水中の226Ra濃度は,サイト毎に塩分依存性の吸着脱離反応により支配されていることが示唆された.また,地下水中Ra濃度の支配要因として酸化還元環境も重要であることも示唆され,淡水系地下水中のRa同位体挙動を支配する要因について,重要な知見を得ることが出来た.
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