研究課題/領域番号 |
26740022
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
臺野 和広 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (90543299)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射線 / 発がん / 乳がん / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
乳腺は、放射線発がん感受性の高い組織である。一方、放射線で誘発された腫瘍におけるエピジェネティック異常に関する知見は、未だ非常に少ない。最近、申請者らは、放射線で誘発されたラット乳がんにおいて、マイクロアレイを用いた網羅的DNAメチル化解析を行い、乳がんの50%以上において、高頻度にDNAメチル化異常を伴う新規がん関連遺伝子候補を複数見いだした。興味深いことに、候補遺伝子の大部分は、ホメオボックスと呼ばれる転写因子をコードする遺伝子であった。本研究は、ホメオボックス遺伝子のエピジェネティックな異常と、それらを制御するポリコーム/トリソラックス群タンパク質発現の異常が、放射線被ばくによる乳腺組織の多段階発がん過程のどのステップで引き起こされるか、さらには、発がんに結びつくメカニズムを明らかにすることを目的とする。 今年度は、放射線(4 Gy)照射1~6ヶ月後の雌ラットより摘出した乳腺組織から、乳管の拡張や腫大といった病変部位の検出を行った。病変の一部は、病理解析用に固定し、残る病変より分子解析用のサンプルを抽出した。抽出したサンプルを用いて、候補ホメオボックス遺伝子のDNAメチル化異常とその発現異常や、ポリコーム/トリソラックス群タンパク質の発現異常が起こっているかを検証し、一部のホメオボックス遺伝子において、前がん病変の段階からエピジェネティック異常を伴うものを見出した。同時に、病変の病理解析と、増殖マーカー、細胞極性マーカー、乳腺病変マーカーの検出を行い、病変の解析を開始した。今年度の研究結果は、放射線による乳腺の発がんの初期過程には、ホメオボックス遺伝子のエピジェネティックな異常が強く関与している可能性を示唆しており、エピジェネティックな放射線発がん機構を明らかにするための有益な基礎的情報となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線被ばくによる乳腺の初期病変の検出とホメオボックス遺伝子異常の解析は順調に進んでおり、一部のホメオボックス遺伝子において、前がん病変の段階からエピジェネティック異常を伴うものを見出した。また、次世代シークエンサーを用いた候補遺伝子配列解析のためのプローブのデザインを行っており、次年度に行う研究の準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、次世代シークエンサーを用いた放射線誘発乳がんにおけるホメオボックス調節遺伝子変異の検出を行う。また、遺伝子操作により候補遺伝子の発現を制御した乳腺細胞を作製、三次元培養系を用いて、乳がんの前がん病変から観察されるような乳腺の組織構造の異常の発生の検証等を行い、ホメオボックス遺伝子異常の乳腺の発生・分化およびがん化における役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた分子解析の一部において、条件検討に予定より時間を要したことから、次年度に本解析を行うことになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、放射線誘発乳がんの進行過程におけるホメオボックス遺伝子異常の分子解析を進めると共に、次世代シークエンサーを用いた放射線誘発乳がんにおけるホメオボックス調節遺伝子変異の検出を行う。
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