研究課題
本研究では、メチル水銀による酸化ストレスを介した脳機能障害について、(1)メチル水銀による活性酸素生成メカニズムを明らかにし、さらに、(2)メチル水銀暴露マウスの脳内酸化ストレスを、核磁気共鳴画像法により測定し、脳内酸化と脳機能障害との関連をin vivoで解析する。平成26年度は上記(1)を中心に研究を展開した。グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は、活性酸素消去酵素であり、活性中心にセレノシステインを有しているため、メチル水銀の標的となりうる。そこで、ラット海馬スライス培養系をメチル水銀で処置し、GPx活性を測定したところ、メチル水銀処置によるGPx活性低下が認められた。しかし、GPxを直接、メチル水銀で処置してもGPx活性に影響はなかったことから、メチル水銀がGPxと直接反応している可能性は低いと考えられる。メチル水銀のミトコンドリア活性酸素生成に及ぼす作用を検討するため、ミトコンドリアDNA欠損細胞を作製した。SH-SY5Y細胞をピルビン酸の存在下、エチジウムブロミドで60日間処置すると、チトクロムc酸化酵素の発現と活性、さらに、細胞の酸素消費量が低下した。この細胞をメチル水銀で処置すると、通常培養したSH-SY5Yと比較して活性酸素生成量が減少し、興味深いことに、メチル水銀に対して耐性を示した。従って、メチル水銀による神経細胞障害には、ミトコンドリア由来の活性酸素が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、2つのサブテーマ(1)メチル水銀による活性酸素生成メカニズムを明らかにする、(2)メチル水銀暴露マウスの脳内酸化ストレスを、核磁気共鳴画像法により測定し、脳内酸化と脳機能障害との関連をin vivoで解析する、から成る。(1)については、ミトコンドリアDNA欠損細胞を用い、ミトコンドリア由来の活性酸素が神経障害に寄与することを直接的に明らかにすることができた。(2)については、メチル水銀投与量、投与時間などを決定するための予備的試験を行った。従って、(1)のテーマの終了の目処がたち、さらに、(2)の予備的検討も終えたことから、“おおむね順調に進展している”と評価した。
平成27年度は、当初の計画通り、MRIを使用してメチル水銀投与マウスの脳内酸化ストレスを測定し、さらに、脳内酸化と神経障害、行動異常との関連を明らかにする。メチル水銀投与量や投与期間などの予備的検討は終了しているため、速やかに上記実験に取り掛かることができる。
計画通りに使用した結果生じたごく少額の次年度使用額であり、平成26年度の使用額はほぼ予定通りの金額であった。
残額は、平成27年度の予算と併せて、動物や試薬購入費として使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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巻: 2015 ページ: 343706
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