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2015 年度 実施状況報告書

ゼブラフィッシュを用いたアクリルアミドの毒性における小胞体ストレス応答の研究

研究課題

研究課題/領域番号 26740025
研究機関東京女子医科大学

研究代表者

蒋池 勇太  東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (70386556)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードゼブラフィッシュ / 環境毒性学 / 小胞体ストレス応答 / アクリルアミド
研究実績の概要

小胞体ストレス応答は近年、数々の神経変性疾患に関与することが報告されており、疾患の病因究明の観点から注目されつつある。しかし、環境毒性学の観点から小胞体ストレス応答に着目した研究は少なく、特に個体レベルでの研究は、申請者によるゼブラフィッシュを用いた報告のみである。従って、この先行研究の成果をさらに展開させることが重要である。本課題では、アクリルアミドに注目し、その毒性発現機序における個体レベルでの小胞体ストレス応答の役割を明らかにすることを目的としている。アクリルアミドは、さまざまな製品原料として用いられる一方、神経・肝毒性、変異原性が古くから知られている。また、イモ類などの高温調理により生成され、日常生活で曝露されうる身近な有害化学物質である。しかし、アクリルアミドの毒性発現機序はいまだ明らかでない。
申請者らは、ゼブラフィッシュ幼生を用いる本課題に先立ち、アクリルアミドをヒト神経芽腫細胞SH-SY5Yに曝露すると、活性酸素種(ROS)の蓄積が亢進し、そのROSにより小胞体ストレス応答経路が活性化され、アポトーシスを含む細胞死が誘導されることを明らかにした。これらの知見をもとに、今年度は、アクリルアミドの神経毒性への小胞体ストレスの関与に注目し、ゼブラフィッシュ幼生を用いた解析を行った。まず、曝露条件を検討し、その結果を踏まえ、受精後6日の幼生にアクリルアミドを24時間曝露したのち、切片を作成し、Kluver-Barrera法による中枢神経組織の染色、TUNEL法によるアポトーシスの検出、in situ hybridization法による小胞体ストレス依存的アポトーシス誘導因子chopの発現解析を行った。その結果、アクリルアミド曝露によりゼブラフィッシュ幼生の脳においてchopを発現する細胞が出現すること、アポトーシス細胞死が起こり、脳の構造が劇的に崩壊することが明らかとなった。これらの成果は現在論文投稿準備中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前述のとおり、本課題の予備的研究として行ったヒト神経芽腫細胞SH-SY5Yを用いた研究に予想以上の発展がみられ、ゼブラフィッシュ幼生を用いる研究にもフィードバックできる貴重な結果を数多く得られた。これらの結果に基づき、当初計画よりもゼブラフィッシュ幼生を用いて行う解析の対象を限定してはいるが、本年度上半期に予定していた、アクリルアミド曝露により生じる(i)形態レベルでの異常、(ii)器官レベルでの異常、(iii)細胞レベルでの異常についての解析は、おおむね達成できた。その内容はSH-SY5Y細胞を用いて得られた結果とともに、つまり、アクリルアミドの神経毒性に対する小胞体ストレスの関与についてin vivoおよびin vitroの双方から検討した研究として、現在論文投稿準備中である。また本年度の下半期に予定していたATF4ノックアウトゼブラフィッシュの作成については、CRISPR-Cas9法を用いてノックアウトするのに必要なプラスミドの作成が終了している。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断して差し支えないと考えられる。

今後の研究の推進方策

最終年度に当たる次年度は、ATF4をノックアウトしたゼブラフィッシュを作成し、アクリルアミドの毒性発現における小胞体ストレス応答の役割を解明する、という当初の計画に基づき研究を遂行する。それに加えて、chopのノックアウトゼブラフィッシュの作成にも着手したい。本年度までに得られた知見から、アクリルアミド曝露によって誘導される小胞体ストレス応答は、シャペロンなどの発現を誘導する細胞保護作用ではなく、chopの発現を介してアポトーシスを誘導する細胞傷害作用をより強く有していると考えられる。そのため、小胞体ストレス応答のシグナル経路において細胞生存と細胞死双方のベクトルを牽引するATF4のノックアウト個体と、細胞死にのみ向かうchopのノックアウト個体の比較をすることで、アクリルアミドの毒性発現機序における小胞体ストレス応答の役割をより明確にできると考えられる。

次年度使用額が生じた理由

①本年度に予定していた、比較的高額な遺伝子ジェノタイピング用のキット試薬の購入がなかったため。
②毎年参加している日本衛生学会が、本年度の開催がなく5月に開催されるため。

次年度使用額の使用計画

①本年度に購入予定であった試薬に加え、次年度の研究推進に必要な物品を適切に購入する。
②該当分の旅費は次年度5月に開催される日本衛生学会に使用する。また、次年度内に1回の国際学会への参加を計画する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] DNA damage response in proliferating Müller glia in the mammalian retina.2016

    • 著者名/発表者名
      Nomura-Komoike, K., Saitoh, F., Komoike, Y., Fujieda, H.
    • 雑誌名

      Investigative Ophthalmology and Visual Science

      巻: 57 ページ: 1169-1182

    • DOI

      10.1167/iovs.15-18101.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Single nucleotide variations in CLCN6 identified in patients with benign partial epilepsies in infancy and/or febrile seizures.2015

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto, T., Shimojima, K., Sangu, N., Komoike, Y., Ishii, A., Abe, S., Yamashita, S., Imai, K., Kubota, T., Fukasawa, T., Okanishi, T., Enoki, H., Tanabe, T., Saito, A., Furukawa, T., Shimizu, T., Milligan, C.J., Petrou, S., Heron, S.E., Dibbens, L.M., Hirose, S., Okumura, A.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 10 ページ: e0118946

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0118946. eCollection 2015.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Experimental evidence shows salubrinal, an eIF2α dephosphorylation inhibitor, reduces xenotoxicant-induced cellular damage.2015

    • 著者名/発表者名
      Matsuoka, M., Komoike, Y.
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 16 ページ: 16275-16287

    • DOI

      10.3390/ijms160716275.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 網膜の変性によるMullerグリアの細胞周期進入とDNA損傷応答2015

    • 著者名/発表者名
      蒋池かおり、齋藤文典、蒋池勇太、藤枝弘樹
    • 学会等名
      第19回視覚科学フォーラム
    • 発表場所
      ホテル福島グリーンパレス(福島県福島市)
    • 年月日
      2015-08-19
  • [備考] 研究業績データベース

    • URL

      http://gyoseki.twmu.ac.jp/twmhp/KgApp?kyoinId=ymdigbgoggk

  • [備考] 衛生学公衆衛生学(一)教室ホームページ

    • URL

      http://www.twmu.ac.jp/Basic/hygiene1/index.html

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公開日: 2017-01-06  

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