研究課題
環境汚染物質の曝露により、生物では多様な反応が生じるが、申請者は小胞体ストレス応答に注目している。小胞体ストレス応答は近年、数々の神経変性疾患に関与することが報告され注目を集めているが、環境毒性学の観点から小胞体ストレス応答に着目した研究は少なく、特に個体レベルでの研究は、申請者によるゼブラフィッシュを用いた報告のみである。申請者は、新たに有害物質としてアクリルアミドに注目し、その毒性発現機序における個体レベルでの小胞体ストレス応答の役割を明らかにすることを目的として本研究を行った。アクリルアミドは神経・肝毒性、変異原性が古くから知られている。近年、イモ類などの高温調理により生成されることが報告され、日常生活で曝露されうる身近な有害化学物質として認知されるようになったが、その毒性発現機序はいまだ明らかでない。申請者は、アクリルアミドの神経毒性発現機序に注目し、まず、アクリルアミドをヒト神経芽腫細胞SH-SY5Yに曝露すると、活性酸素種(ROS)の蓄積が亢進し、そのROSにより小胞体ストレス応答経路が活性化され、アポトーシスを含む細胞死が誘導されることを明らかにした。続いて、神経毒性についてゼブラフィッシュ幼生を用いた解析を行った。受精後6日の幼生にアクリルアミドを24時間曝露したのち、切片を作成し、中枢神経組織の染色、アポトーシスの検出、小胞体ストレス依存的アポトーシス誘導因子chopの発現解析を行った結果、アクリルアミド曝露によりゼブラフィッシュ幼生の脳においてchopを発現する細胞が出現すること、アポトーシス細胞死が起こり、脳の構造が劇的に崩壊することを明らかにした。以上の研究成果はToxicology and Applied Pharmacology 310, 68-77. 2016に原著論文として掲載された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)
産業医学ジャーナル
巻: 40 ページ: 61-65
Toxicology and Applied Pharmacology
巻: 310 ページ: 68-77
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日本衛生学雑誌
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http://www.twmu.ac.jp/Basic/hygiene1/index.html
http://gyoseki.twmu.ac.jp/twmhp/KgApp?kyoinId=ymdigbgoggk