研究課題/領域番号 |
26740029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 昌幸 東京大学, 総合文化研究科, 特任研究員 (90466003)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | チョウ / 寄主植物 / マクロスケール / 分布モデル |
研究実績の概要 |
環境変動下において、種の分布モデルを用いて将来の分布変化を評価するアプローチが盛んにおこなわれている。しかし、生物間関係が考慮されていないことも多く、正しい評価ができていない可能性がある。そのために、本年度は寄主植物の分布を考慮したチョウ類の分布モデルを構築し、分布推定における生物間関係の重要性を示すことに取り組んだ。 分布モデルを構築するために、近年の減少が見られるチョウ種や里山環境に依存したチョウ種などから対象種を選択し、種ごとに分布モデルの作成をおこなった。種の分布を説明する要因には、気候要因や地形要因、土地利用に加えて、寄主植物の分布を用いた。ただし、寄主植物の分布は面的にわかっているわけではないので、各チョウ類における寄主植物の分布を統計モデルによって環境要因から推定することで面的な寄主植物データを用意した。これらの要因から種の分布を推定する統計モデルを構築した。それらの統計モデルを用いて、種の分布に影響を与える各要因の相対的な重要性について算出した。 その結果、全体としてみると、日本におけるチョウ類の分布規定要因としては気候要因の影響が大きいことが示され、土地利用の効果も一定の割合で見られた。さらに、アカシジミやスジボソヤマキチョウなどでは、寄主植物の影響が比較的大きく検出された。寄主植物の分布は推定値を用いているため結果の解釈には注意を要するが、生物間関係を考慮することの重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果の解釈に注意する必要があるものの、各種においておおむね良好な分布モデルを構築することができた。また、それを用いて各要因の重要性の評価もおこなうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
得られた分布モデルの結果の解釈についてさらに検討を進める。そのうえで、将来の環境変動シナリオに基づくチョウ類の分布変化の予測をおこなう。気候要因と土地利用の将来シナリオを用意し、現在の分布推定結果とシナリオ下における分布推定結果を比較することで、環境変動シナリオごとにどれくらい分布域が変化するのか見積もる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、旅費や論文発表にかかる費用が予定を下回ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は成果還元のための学会発表や論文発表のために、研究費を使用する予定である。
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