研究課題/領域番号 |
26740032
|
研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
姉崎 克典 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究員 (20442634)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | PCBs / 非意図的生成 / ベイズ形半因子モデル / 生物濃縮 / レポータージーンアッセイ / 生体影響 |
研究実績の概要 |
非意図的生成PCBsとしては、これまで物の燃焼による発生の他に、顔料や塩素化パラフィンの製造過程における副生成が知られてきた。しかし、その他化成品にもこのようなPCBsが含有する可能性があることから、特に製造工程においてクロロベンゼンを使用する化成品のPCBs含有の有無について検討した。 フェニル系シリコーンの原料であるクロロフェニルシラン類中に非意図的にPCBsが含有していることが判明し、その濃度とコンジェナーパターンを各試薬メーカーが販売しているクロロフェニルシラン類について検討した。トリクロロフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、クロロトリフェニルシラン、ジフェニルシランジオールにおけるPCBs濃度は、それぞれ0.00072~2.7 、6.5~1,500、0.019~1.1 、 0.12~120mg/kgであり、特にジクロロジフェニルシランとその加水分解生成物であるジフェニルシランジオールの濃度が高い傾向が認められた。いずれも低塩素化体であるmono-CBsやdi-CBsが高い割合で検出された。特にdi-CBsで検出されたコンジェナーは、PCBsにおける2つのビフェニル骨格に塩素原子が一つずつ置換した構造のものであり、クロロフェニルシラン類を合成する際に使用されるクロロベンゼンが、その合成過程で二量化していることが示唆された。シリコーンを使用している接着剤中のPCBsを分析したところ、ND~40mg/kgであった。PCBsが検出されたロットの同族体及びコンジェナーパターンはジクロロジフェニルシランやジフェニルシランジオールとほぼ同等であった。 一方、リン系難燃剤中のPCBsの検討も行った。しかしながら、PCBsを検出したものは僅かであり、その濃度も全て0.05ppm以下の低濃度であった。すなわち、非意図的に生成したPCBsは検出されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していた未測定・未解明の顔料・化成品中のPCBs異性体パターンの把握はほぼ達成された。この検討結果については既に国際学会で発表され、また、学術論文として受理・発行されている。また、非意図的生成PCBに特徴的に含まれるコンジェナーのAhR及びホルモン受容体との反応性に対する代謝の影響について検討するための検液の作成も終了していることから、今後これらのレポータージーンアッセイを進める準備も整っている。さらに、海洋における高次捕食者である、鯨類等の海棲哺乳類の試料の確保も進行中であり、今後検討を進める上で順調に研究が進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
化成品等に含まれる非意図的生成PCBsの新たな探索は終了する。しかしながら、今後新たにPCBsを含有する可能性のある化成品が認められ場合には、さらに調査を行う予定である。この検討により、環境中での影響の強い非意図的生成PCBsは、顔料によるものであると考えられた。そのため、環境中におけるPCBsの汚染由来は、カネクロールに代表されるPCB製品や燃焼の他、アゾ系顔料とフタロシアニン系顔料であると仮定できた。これらのコンジェナープロファイルをPCBs汚染データとして、ベイズ形半因子モデルにより環境中の汚染由来についての定量的評価手法を検討するための基礎資料とし、前課題(JSPS KAKENHI Grant Number 24710016)で作成したモデルを改良する予定である。 この他に当該年度においては、非意図的生成PCBsを含む顔料や化成品に特徴的に含まれるコンジェナーについて、AhR活性(ダイオキシン様作用)や、これらによるERやARのホルモン受容体に対する作用を検討するため、各コンジェナー別にアッセイ用の検液の準備を行った。今後、レポータージーンアッセイにより、各活性について検討する。 また、生物試料中における非意図的生成PCBsの動態解析を行うため、海洋における高次捕食者である、鯨類等の海棲哺乳類の試料の確保を行った。これらの試料中のPCBs分析を進める。 以上の検討結果をとりまとめ、最終年度において生物種に取り込まれた顔料・化成品由来のPCBsの生体影響についてその代謝物も含め定量的に評価する。また、PCBを含有する顔料や化成品の過去における生産・使用量を把握し、その環境リスク、生態系への影響を工業製品であるカネクロール等と比較検討する。
|