秋期における収穫後の田園地帯における環境大気の秋期のダイオキシン類及びPCBの日間変動について調査を行い、気象要因との関連性や高濃度要因、非意図的生成PCBの影響等の検討を行った。ダイオキシン類及びPCBが高濃度となる気象的要因としては、風速が弱く大気が安定であること、降水が少ないこと、大気が安定であること、等が確認された。PCBについては、これらの他に温度依存性も認められた。ベイズ型組成半因子モデルによる解析から、調査地点の大気中のダイオキシン類のほとんどが燃焼発生源由来であったが、PCBについてはダイオキシン類濃度が高い時は燃焼発生源由来の寄与が強く、低い場合はカネクロールの寄与が強くなっていた。一方、非意図的生成PCBの影響は小さかった。 非意図的生成PCBとして代表的な25のコンジェナーについて、ホルモン受容体を含む10種の核内受容体及びダイオキシン受容体(AhR)を介した作用を高感度レポーターアッセイにより検討した。エストロゲン受容体(ER)α/βアゴニスト及びアンタゴニスト作用は、19及び13コンジェナーにそれぞれ認められた。グルココルチコイド受容体では5コンジェナーに、アンドロゲン受容体では全てのコンジェナーにアンタゴニスト作用が認められた。AhRアゴニスト作用は5コンジェナーに認められた。非意図的生成PCBとして代表的なPCB-11は、他のコンジェナーに比べ各受容体の作用は小さかった。 PCB-11は、底質や環境大気といった試料には一定の濃度で含まれていた。海棲哺乳類中にはPCB-11をはじめとする低塩素化PCBはほとんど含まれておらず、取り込まれたPCBsが生体内で蓄積せず速やかに代謝されているものと考えられた。このため生体における非意図的生成PCBの定量的な影響評価には、代謝物である水酸化PCBについても検討が必要であった。
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