研究実績の概要 |
本研究では、環状構造を有するバイオマス由来物質から新規高性能バイオマスプラスチックを創製することを目的とする。化学構造から固体構造まで一気通貫に制御し、構造学的見地から新規バイオベースポリマーの高性能化を目指す。 1.重量平均分子量5万程度の高分子量化に成功した2,5-フランジカルボン酸由来ポリエステル(mGF)について、一軸配向試料と二重配向試料の作製に成功し、それぞれX線回折測定を行った。得られた繊維図とワイセンベルグ写真から、単位格子と分子鎖コンホメーションの決定を行った。これまでに得られたmGFの融点や結晶化速度のアルキル炭素数依存性における偶奇効果と、分子鎖コンホメーションとの間に明確な相関を見出した。 2.アルキル鎖の長いイソマンニド由来ポリエステル(M12)やイソソルビド由来ポリエステル(S12)について、X線回折、赤外分光、エネルギー計算により分子鎖コンホメーションを決定し、結晶性とアルキル炭素数との関係を理論的に説明することができた。さらに、溶媒結晶化させた試料の詳細な小角X線散乱解析に基づき、Gibbs-Thomson式から平衡融点を決定した。 3.アルキル鎖の短いイソマンニド由来ポリエステル(M4)について、シンクロトロン広角X線回折/小角X線散乱同時測定を等温及び非等温条件で系統的に行い、その結晶化及び転移挙動を調査した。その結果、2つの結晶形の結晶化速度及び存在割合の結晶化温度依存性や、結晶転移のメカニズムを解明することができた。後者については、平衡論及び速度論の両観点から考察した。 4.イソイジド由来ポリエステル(I4)の一軸配向フィルムを作製し、そのX線回折像からコンホメーションを決定し、イソヘキシド構造の立体異性に基づき、M4との比較を行った。
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