山野に自生し食用となる植物を、人は山菜として利用してきた。人工的な環境で育つ野菜とは異なり、山菜の生産性は収穫後の山菜の応答に依存する。そのため、山菜を持続的かつ効率的に利用するには「収穫がその後の山菜にどのような影響をもたらすか」を明らかにすることが必要となる。本研究では、北海道の山菜であるチシマザサのタケノコに着目し、継続的に3年間タケノコを収穫した後のササ個体群の状態、タケノコの出現数や味を調査し、山菜の個体群の遷移や生産性に及ぼす収穫の影響を調べた。 平成25年に北海道大学天塩研究林に10m四方の実験区を20ヵ所設置し、それらを収穫区と対照区に分けた。収穫区では平成26-28年の間、毎年タケノコを収穫した。取り残したタケノコの数から、収穫区ではその年に生産されたタケノコの約7割を収穫していた。収穫の開始年(平成25年)のタケノコの出現数は処理区間で違いがなかったが、翌年には、タケノコの出現数は対照区よりも収穫区で2.5倍も多かった。この傾向はその後も続き、平成26-28年のタケノコの出現数は収穫区で常に高かった。一方で、ササの密度や太さ(ササの密度と太さは、それぞれ生産されるタケノコの数や太さと強い相関がみられる)、タケノコの味に関しては収穫の影響はみられなかった。このように、3年の収穫では、チシマザサの遷移過程に影響しないでタケノコの生産性を高めると考えられる。 以上の結果から、「人為的撹乱を加えてササの補償能力を引き出すことで、タケノコの生産性は高まる」という仮説を持った。この仮説を確かめるために「地上部の刈取り」という収穫とは異なる撹乱をササに与える実験を平成27-28年に実施した。その結果、地上部の刈取りによる生産性の強化はみられず、タケノコの生産性は若干低下していた。この結果は「ササの補償能力を引き出すには撹乱の種類を考慮することの必要性」を提示する。
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