研究課題/領域番号 |
26740046
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 博徳 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00599649)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イシガイ目二枚貝 / 九州北部 / 分布状況 / 農業用水路 / 氾濫原 / 河川環境 |
研究実績の概要 |
本研究では、九州北西部の一級河川のうち、比較的良好な氾濫原環境が残されており、九州在来のイシガイ目二枚貝類8種の生息が知られている河川を調査対象流域として、セグメント2の流呈に分布する氾濫原環境における二枚貝の分布状況とその生息場の物理環境調査に取り組んでいる。 平成27年度は、平成26年度に引き続き広域的な分布状況調査を行うとともに、局所的な好適生息場(ハビタットスケールのホットスポット)における生息状況と生息場所の物理的構造の関係に関する調査を行った。平成28年4月現在、広域分布調査では、これまでに約300地点の調査を終え、約70地点で二枚貝類の生息を確認している。そのうちホットスポットと呼べる安定的かつ分布個体数が多い生息地点は8地点のみであり、二枚貝類の生息環境は極めて危機的であることが鮮明になりつつある。また、同一流域内の氾濫原においても農業用水路系統ごとに二枚貝の分布状況が異なることや、イシガイ類が生息する地点は、自然堤防に作られた集落などにより圃場整備の影響が小さいことなどを明らかにした。イシガイの生息分布を物理環境によって説明する統計モデルを作成し、その場の流速や河床材料の堆積状況が、イシガイの生息に優位に影響を与えることを明らかにした。局所的な好適生息場を対象として、ハビタットスケールでの分布状況調査を行うとともに、生息場所の水理環境(平水および洪水時)について水理計算を行い、両者の関係性を明らかにした。具体的には、水路の物理的な形状(急縮や局所的な凹み)が土砂の堆積状況や洪水時の流速に影響を与え、その結果局所的に二枚貝の好適生息場所を提供していることが示された。なお、二枚貝類の好適な生息環境が乏しいことに加え、本調査を進めている最中にも非常に速いスピードで農業用水路のU字側溝化が進んでおり、二枚貝の生息場は急速に失われつつあることが改めて確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査はほぼ予定通り進められており、おおむね順調に進展していると考えている。一方で、二枚貝の生息場所の改変・劣化が著しく進んでおり、好適生息場所に関するデータを取得が困難を極めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で対象とする対象流域はいずれも広範であるが、二枚貝の生息分布に与える影響は、一級水系の流域規模の広域的なスケールよりも、氾濫原における農業用水路系統ごとやハビタットスケールごとの物理的な環境が卓越していることが、H27年度までの研究成果から明らかになりつつある。そのため、より詳細なスケールでの調査が必要と考えており、最終年度に向けては、広域的な調査を多くの流域で行う調査方法から、ある程度調査流域を限定して、各支川規模で調査地点数を増やすなど詳細な調査にコストをかける方法に変換する必要があると考えている。また好適生息環境(ホットスポット)におけるデータを計画投与に比べて詳細に取得する(地点数は少なくなる)ことや、二枚貝の有する水理特性などについても検証するなど、空間スケールが比較的小さい規模の調査研究をきめ細かく進める計画に変更して研究を進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
二枚貝の生息環境の劣化が想像をはるかに上回る速度で進行していることが確認され、二枚貝の生息分布地がきわめて限定されていることが鮮明になった。そのため、二枚貝の生息場所の重要な物理環境データである水位データの観測地点数が当初の予定数に比べて少なくなり、水位計等の物品購入にかかる経費が計画より少なくなった。以上が次年度使用額が生じている主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度までの調査で、とりわけホットスポットと呼ばれる好適な生息環境については極めて少ないことが明らかとなった。そのため、前述の通り研究計画に若干の変更加える予定である。研究計画の変更に伴い、経費の使用計画も変更が生じる予定である。具体的な変更点としては、水位計に計上していた経費を、水質計測計や二枚貝の水理特性を把握するためのひずみゲージなどに使用することなどを想定している。
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