本研究の目的は、企業の再生可能エネルギー(以下、再エネ)関連イノベーションを促進するメカニズムを明らかにすることである。そのために、(i)欧州でのヒアリング調査、(ii)日本企業へのアンケート調査を通じて、企業を取り巻くどのような外生的要因と内生的要因が再エネ関連イノベーションの促進に影響を与えているのか検証した。 これまで(i)に関して、欧州委員会、経済協力開発機構、国際エネルギー機関、企業等へのヒアリングの実施、国際シンポジウムや国際学会への参加・研究報告を通じて、欧州委員会や各国政府の環境政策、企業独自の取り組みが再エネ関連イノベーションの促進に与える影響を分析してきた。最終年度である平成29年度は、(i)の分析をもとに日本企業を対象とした独自のアンケートを実施した。これまでの分析より抽出した企業を取り巻く再エネイノベーションの誘発要因を整理して作成した調査票を用いて、日本企業に関してはどのような外生的要因と内生的要因が再エネ関連イノベーションの誘発に影響を与えているのか調査した。その結果、外生的要因である環境政策の変化が日本企業の再エネ関連イノベーションの促進に影響をもたらす傾向が見られた。特に、将来の導入が検討されている環境政策が導入前にも関わらず大きな影響をもたらしていることが分かったことは興味深い。内生的要因としては、企業の社会的責任(CSR)に関する取り組みを積極的に行っている日本企業ほど、再エネ関連イノベーションを生み出すことに積極的である傾向が見られた。 本研究は、日本の企業レベルの独自なアンケートのデータを用いて、パリ協定の温度目標を遵守するために要となる再エネ関連イノベーションの促進要因を検証したところに意義がある。このようにイノベーションの促進要因を検証することは、今後の更なる温室効果ガス削減を実現する際に重要な視点を提示する。
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