研究課題/領域番号 |
26740056
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
尾下 優子 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 助教 (50709227)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 産業構造分析 / サプライチェーン / フロー解析 / 持続可能な産業システム |
研究実績の概要 |
本研究は、地球温暖化問題、資源問題、災害など、多地域、多産業が関わる問題を解決するために、産業の複雑な連関構造・波及構造を把握し、問題を効果的に解決するポテンシャルを持つ異業種間の連携グループを特定することを目的としている。具体的には、経済学の手法である産業連関理論や、数理学の手法であるグラフ理論、また工学分野の知見を組み合わせた新たな産業構造解析モデルを確立し、日本経済を対象とした環境負荷・資源・災害リスク集約的な産業構造の検出を行う。この分析結果を基に、戦略的な環境負荷削減計画、資源管理・獲得計画、産業配置・成長計画について、統計と技術情報に裏付けされた具体的な提案を行う。上記の目的のもと、平成26年度は、(1)新たな解析モデルの開発、(2)分析対象(ケーススタディ)の拡大、(3)技術・工学的知見との連結、について研究を進めた。
(1)ある製品・産物やその副産物が生産されてから、どのような産業を経由して、どのような形で、最終消費者のもとに届くのかというフローを産業連関分析の手法を用いて解析する手法を開発し、フローの複雑度や集中度、経済効果の大きさを測る指標の提案を行った。 (2)(1)の手法を用いて、農林産物のフロー解析を行った結果、農林産物によってフローの形状や経済効果が大きくことなることや、金額のフローと物量のフローの間に大きな差異があることを特定した。 (3)(2)の結果を踏まえ、現在のシステムを著しく壊すことなく、農林産物が生み出すバイオマス資源を有効かつ健全に利活用する方法について、農学や工学の専門家と議論し、手法の改善点などについて精査した。また、技術・工学的知見との連結を可能とする詳細な産業連関表を作成することを目標に、種子島地域を対象としデータの収集、種子島地域の経済・産業構造の調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽光や風力というようなエネルギーのみを生み出す資源と異なり、エネルギーと物質を生み出す資源として注目され、また農林業の構造(機能)強化、持続性の面でも注目されているバイオマスについて、それがどこでどのように生産され、現在どのように利用されているのか、またバイオマス利用に関する直接・間接的なステークホルダーを特定する手法を提案し、指標化した点で、新たな産業構造解析モデルの開発という目標を達成している。 また、分析結果について、農学や工学分野の研究者と議論を重ね、結果の裏付けや意義付け、現実の反映度などを精査し、それをモデルにフィードバックすることにより、より包括的な手法の開発にも取り組んでいる。 また定量的に得られた結果をサンキーダイアグラムを用いて視覚的に示すことにより、産業間の合意形成を援助する方法についても取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在は統計局が公表している産業連関表(全国版)を用いているが、今後は、より詳細な、技術・工学的知見との連結が可能な産業連関表を作成し、新規技術の導入が域内経済や産業システムに与える影響などを分析することにより、環境・資源・経済の面で強靭かつ持続的な産業システムを提案するフレームワークの構築を目指す。 そのためには、ケーススタディ地区(種子島地域など)を対象としたデータの収集、経済・産業構造の調査や、各種統計データの取得を行い、工学や農学の専門家や産業の従事者を含めて結果を精査することにより、より現実を反映した産業連関表の作成を目指す。 また、産業構造に対する災害等のリスク分析についても、災害研究の専門家とともに、被害想定やシミュレーションを行うことにより、災害に対して脆弱なサプライチェーンなどの特定化を目指す。 このことにより、統計と技術に基づいた『高い削減ポテンシャルを持つ産業グループ』を単位とした、戦略的な負荷削減策、資源管理・獲得政策、産業配置・生産計画を提案し、持続発展可能かつ強靭な産業システムの構築を援助することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実態を反映したより詳細な産業連関表を作成し、工学的・農学的知見と連結したより包括的な分析を行うために、ケーススタディの対象地区(種子島など)の現地調査を行う必要があり、当初予定していた以上に旅費が必要となり、当初購入予定であったワークステーションなどを購入できなかったため、当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度においても、引き続き、現地調査のための旅費が当初予算より必要であることが見込まれるが、平成26年度から繰り越した次年度予算額と合わせ、デスクトップパソコンやソフトウェア、必要資料・書籍などを購入する予定である。
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