本研究は、地球温暖化問題、資源問題、災害など、他地域、他産業がかかわる問題を解決するために、産業の複雑な連関構造、波及構造を把握し、問題を効果的に解決するポテンシャルを持つ異業種間の連携グループや利害関係者・意思決定者を特定することができるモデルを構築することを目的としている。具体的には、経済学の手法である産業連関理論や、数理学の手法であるグラフ理論などを用い、工学分野の知見を反映可能な産業構造解析モデルを確立することにより、環境負荷や資源、災害リスクが集約的な産業構造の検出や、変化に伴う利害関係者・意思決定者の構造を分析する。 上記の目的のもと、平成28年度は、(1)分析結果と現実との乖離の検証、(2)モデルへのフィードバックによる、より頑健かつ包括的なモデルの構築、(3)解析結果の可視化、利害関係者や政策決定者への結果の開示および議論を行った。 (1)具体的なケーススタディを行う対象地域として種子島を設定し、作成した種子島の産業連関表を用いて、新規技術の導入が域内経済や産業構造に与える影響について解析した。その結果と現実の乖離について分析を行った。(2)(1)の解析結果と現実の乖離の要因を修正し、より頑健かつ包括的なモデルの構築作業を行った。(3)分析結果を可視化し、利害関係者や重要な意思決定者を定量化・可視化する方法を構築し、実際に地域の利害関係者や政策決定者との議論を行った。 このようなケーススタディや分析を通じて、持続発展可能かつ強靭な産業構造構築に向けた、具体的な改善提案や政策提案を統計と技術に基づいて提示し、またその意思決定に必要な情報を意思決定者にわかりやすい形で提示する手法を構築した。
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