研究課題/領域番号 |
26740057
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小松 悟 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (80553560)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 太陽光発電 / 農村電化 / 貧困 / バングラデシュ / 気候変動 / SHS |
研究実績の概要 |
平成28年度は、バングラデシュ農村部での調査委託及び平成27年度までに得られたデータをもとに、データ分析を実施した。調査では、農村部3県(マニクガンジ県、キショレガンジ県、コミラ県)で590世帯を対象に、SHSの利用やオングリッド型への転換、健康面・教育・エネルギーアクセス・家電製品保有状況など家計状況に関する情報を集めた。このうち、2013年時点でSHSを利用していた341世帯のうち、再度十分な追跡調査データが得られた295世帯を対象として、SHS普及地域で送電線網延長が進んだ場合に生じる、電化設備の利用状況変化による生活水準への影響を評価した。295世帯のうち、SHSを継続していたのは110世帯、SHSからグリッドに切り替えたのは185世帯であった。 SHSの利用継続世帯をControl, SHSからGridへの切替世帯をTreatmentと設定した、差の差の検定法(Difference-in-Difference)により、電化設備の変化による生活水準への影響を推計した。分析の結果、送電線網利用への切り替えにより、利用している電灯数の増加や、テレビの利用増加といった効果が見られた。反面、子供の学習時間の増加や、収入(農業収入・非農業収入)増加といった効果は観察されなかった。本研究からは、送電線網の延長による生活改善の効果は示唆されたものの、教育・健康便益に限定すれば、送電線網の普及が進んだとしても、公共政策として望ましい効果は得られていないことが示唆された。 更に農村電化の文脈で、今後SHSが果たす役割・位置づけについて十分な整理が必要であることも指摘した。具体的には、1.Gridが到達するまでの経過措置、2.定期的な電力料金が支払えない貧困層に対する電化設備、3.再生エネルギーを利用した気候変動対策、といった観点で、送電線網と比較したSHSの利点・欠点を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年末から現在(平成29年4月)に至るまで、バングラデシュは治安の悪化に伴い、テロに対する特別警戒が必要となり、不要不急の渡航が禁止された状況が続いている。結果として平成28年度はバングラデシュへの渡航調査が実施できない状況であった。平成29年度に予定しているフォローアップ調査は、現地情勢を慎重に見極めて実施の可否を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に予定しているフォローアップ調査は、現地情勢を慎重に見極めて実施の可否を検討する。可能な限り、調査委託や研究代表者の訪問によって、データや情報の充実化を図ると同時に、他国での事例調査による知見も踏まえながら、得られた成果を積極的に公表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも必要な旅費を節減することができたため、及びバングラデシュへの渡航が治安情勢によって難しくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
調査旅費や成果発表経費に利用する予定である。また必要に応じてバングラデシュ以外の国・地域において、農村電化や貧困の状況を確認する必要があれば、実施の可否を検討する。
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